2017年度の最低賃金の引上げ幅の目安は25円!引き上げ率は2年連続で3%に!

2017年度の最低賃金の引き上げ幅の目安は2年連続で3%に

2017年7月27日、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会が、2017年度の最低賃金(時給)の引き上げ幅の目安を、全国加重平均で3%相当(昨年度は3%)の25円(昨年度は24円)とするとの答申を取りまとめました。

引き上げ率は、2年連続で安倍政権が目指している「年3%」に達しています。

また、引き上げ幅は、初めて20円を超えて話題となった昨年の引き上げ幅(24円)を超えて過去最大の引き上げ幅となりました。

目安通りの引き上げ幅となれば、最低賃金は時給848円となります。

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実際の引き上げ幅は都道府県ごとに決定される

引き上げ幅の目安は、都道府県をその経済規模などに応じてA~Dランクの4つに分けて、そのランクごとに決定されています。

各ランクの引き上げ幅の目安は次の通りです。なお、かっこ内は2016年度の引き上げ幅です。

  • Aランク:26円(25円) 東京、神奈川、千葉、愛知、大阪
  • Bランク:25円(24円) 茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島
  • Cランク:24円(22円) 北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡
  • Dランク:22円(21円) 青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

この後、都道府県ごとに設置される地方最低賃金審議会が、中央最低賃金審議会が示した目安を参考にその地域の実情を考慮した最低賃金額の審議を行い、最終的には、都道府県労働局長(または厚生労働大臣)が、地方最低賃金審議会の意見に基づいてその都道府県の最低賃金額を決定します。

ただ、最終的に決定される引き上げ額が中央最低賃金審議会の示した目安額と大きく異なることはほとんどないため、どの都道府県もランクごとの目安額程度の最低賃金の引き上げが見込まれます。

現実味を帯びてきた「時給1000円」

安倍政権は、2015年11月24日の経済財政諮問会議で、「最低賃金を年3%程度を目途に引き上げて全国加重平均で時給1000円を目指す」と表明しています。

もし、このペースで毎年3%ずつ最低賃金を引き上げていったとすると、全国加重平均の最低賃金は2023年度(平成35年度)に時給1000円を超える計算です。

最も最低賃金が高い東京都では今回の引き上げで最低賃金が時給958円に達する見込みであり、東京都に限れば2019年(平成31年度)に最低賃金が時給1000円を超える可能性があります。

ただ、今年の最低賃金引き上げが実現すれば、2016年度からの2年間の引き上げ率は6%を超えることなります。

さらに、もし来年度(2018年度)も年3%の引き上げを行った場合は、3年間で約10%もの引き上げとなり、急激な最低賃金の引き上げに対応しきれない企業も多くなることが想定されるため、来年度は中央最低賃金審議会がどのような答申を行うのかは注視しておきたいところです。

最低賃金の引き上げに伴う副作用も

最低賃金の引き上げは経済対策として不可欠なものであり、労働者の生活水準の向上や底上げに資するものです。

しかし、現在最低賃金額で働いている全ての労働者が必ずしも最低賃金引き上げの恩恵にあずかれるとは限りません。

最低賃金の引き上げはその副作用も大きく、やり方やタイミングを誤ると逆に失業者の増加などを招きかねません。

最低賃金の引き上げは、働く機会そのものが失われるリスクをはらんでいます。

例えば、企業は、海外に拠点を移して賃金の安い現地の労働者を使用することや、業務の全自動化やシステム化によって労働者を使用しなくてもよい体制をつくることを検討することになるでしょう。 海外への拠点移転やシステム化を行うことが出来ない中小企業は、上がり続ける最低賃金によって採算が取れなくなって事業を継続することが出来なくなるおそれがあり、そうなれば、大企業への一極集中化が進むことも懸念されます。

都市部と地方の最低賃金の格差も問題です。あらゆる分野で地域格差の是正が叫ばれて久しいですが、最低賃金は、その性質上、地域格差の是正とは逆行して都市部と地方の差がだんだん大きくなっています。

最も最低賃金が高い東京都と最も最低賃金額低い沖縄県を比較すると、平成18年度の最低賃金は、東京都が719円、沖縄県が610円でその差は109円でしたが、平成28年度の最低賃金は、東京都が932円、沖縄県の714円でその差は218円まで広がっています。

そのため、都市部への労働力のさらなる集中化を招き、地方はさらに疲弊していくおそれがあります。

金融政策と賃金上昇政策の2つがうまく機能して、好循環の中で企業収益と賃金がどちらも向上していくことを期待したいですね。