配偶者控除の拡大でパートが収入150万円まで働くと手取りはどれだけ増える?

12月8日に来年度の税制改正大綱が発表され、所得税の配偶者控除が受けられる給与収入の上限が、現在の103万円以下から150万円以下に引き上げられることになりました。

なお、来年度(2017年)の税制改正ですが、新しい配偶者控除が適用されるのは、2018年1月からになります。

では、これまで給与収入が103万円以下となるように働いていたパートが、新たに配偶者控除を受けられることになる上限の150万円まで働いた場合、手取り額はどれだけ増えるのでしょうか。

配偶者控除の上限まで働くと原則として社会保険の加入が必要

手取り額を計算する上でまずポイントとなるのが、「社会保険料」です。

これまで、配偶者控除が受けられなくなる「103万円の壁」は、自ら社会保険に加入しなければならない「106万円の壁」や「130万円の壁」を下回っていたため、これまでは、配偶者控除を受けるために収入を103万円に抑えていたパートは、原則として自ら社会保険に加入する必要はありませんでした。

しかし、今回の税制改正によって、「103万円の壁」は「150万円の壁」となり、「106万円の壁」や「130万円の壁」を上回ることになりました。

そのため、今後は、配偶者控除が受けられる上限まで働こうとした場合は、原則として自ら社会保険に加入する必要があり、社会保険料の負担額が手取り額に影響することになります。

所得税は従来通り103万円以上の給与収入に課税される

手取り額を計算する上でもう一つのポイントとなるのが、「所得税」です。

給与収入のみを得ているパートの場合、給与収入が103万円以下であれば所得税が課税されません。

給与所得控除の65万円と基礎控除の38万が給与収入から差し引かれることによって、課税所得が0円(=給与収入103万円-給与所得控除65万円-基礎控除38万円)となるためです。

これまでは、配偶者控除を受けられる収入上限と所得税が課税されない収入上限が同じ103万円であったため、配偶者控除を受けられる範囲で働いていれば所得税の課税もされなかったのですが、今後は、配偶者控除を受けられる収入であっても、所得税を納付しなければならないケースが生じます。

そのため、手取り額を計算する上では、所得税の影響も考慮する必要があります。

なお、住民税は、今回の税制改正の前後で変わりはなく、給与収入が98万円以上の場合に課税されます。

「106万円の壁」と「130万円の壁」では手取り額の計算が異なる

被保険者数が501人以上の会社で勤務しているパート労働者のみが対象となる「106万円の壁」と、それ以外のパート労働者も対象となる「130万円の壁」は、基準額を超えたときに加入する社会保険の種類が違い、社会保険料の負担額が異なります。

(関連記事:「「130万円の壁」と「106万円の壁」を超えたときの影響はこんなに違う!」)

そのため、手取り額を計算する上では、「106万円の壁」を超えた場合と「130万円の壁」を超えた場合に分けて考える必要があります。

「106万円の壁」を超えて健康保険と厚生年金に加入した場合

まず、「106万円の壁」を超えて健康保険と厚生年金に加入することになったパートが収入150万円まで働いた場合は、

社会保険料:約22.5万円

所得税  :約1.2万円

住民税  :約3.0万円

が控除されて、手取り額は約123.3万円となります。

収入103万円で働いた場合と比較すると、約21万円の手取り額の増加となります。

やはり社会保険料の負担額が大きいですね。

「130万円の壁」を超えて国民健康保険と国民年金に加入した場合

次に、「130万円の壁」を超えて国民健康保険と国民年金に加入することになったパートが、収入150万円まで働いた場合を見てみると、 社会保険料:約31.0万円 所得税  :約0.8万円 住民税  :約2.0万円 が控除されて、手取り額は約116.2万円となり、収入103万円で働いた場合と比較した手取り額の増加は、約14万円になります。 こちらはさらに社会保険料の負担が大きく、増加した給与収入47万円の約3割しか手元に残らない計算です。

収入130万円を超えないように働いた方が手取り額は多い

ちなみに、収入を、自分で社会保険に加入しなくてよい130万円までに抑えた場合の手取り額を計算すると、

社会保険料:なし

所得税  :約1.4万円

住民税  :約3.2万円

が控除されて、手取り額は約125.4万となります。

社会保険に加入しなくてよい130万円までの範囲で働いた方が、150万円まで働いたときよりも手取り額が約9万円多くなります。

そのため、大企業以外に勤務していて「106万円の壁」が関係ないパートの人は、手取り金額だけを考慮するのであれば、配偶者控除が受けられる150万円ではなく、社会保険に加入しなくてもよい130万円の収入を意識して働いた方がよいでしょう。

ご自身の状況に応じた試算が必要

今回の計算は一般的なケースによる試算であり、パート本人が他に受けられる所得控除(生命保険料控除など)の有無などによって計算結果は異なります。

また、これらの壁は、基準となる収入の考え方が異なるため、「150万円の壁を超えないように働く」ことと、「130万円の壁を超えないように働く」ことの意味も異なります。

そのあたりは、「実は全く別物!「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」の違いとは?」や、「年末に「106万円の壁」や「130万円の壁」を超えないように勤務調整することに意味がない理由」をご参照ください。

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