年次有給休暇の年5日の時季指定義務。付与日から次の付与日までが1年以内の場合の留意点は?

年次有給休暇の年5日の時季指定義務。付与日から次の付与日までが1年以内の場合の留意点は?


平成31年4月1日に施行される改正労働基準法により、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して毎年5日を取得させることが義務付けられます。

5日の年次有給休暇を取得させなければならない期間は、基準日(年次有給休暇の権利が与えられる日)から1年間です。

ただ、実務上は、法定の基準日(入社6カ月経過時とその後1年ごと)よりも前倒しで年次有給休暇を付与している会社が少なくなく、基準日から次の基準日までの期間が1年以内となる場合が生じます。

基準日から次の基準日までの期間が1年以内の場合、年5日の取得義務の取扱いはどのようになるのでしょうか。

「通算期間全体で年5日を按分した日数」とする特例あり

基準日から次の基準日までの期間が1年以内の場合の取得義務について、労働基準法施行規則第24条の5第2項で次のような特例が示されています。

§労働基準法施行規則

第24条の5第2項 前項の規定にかかわらず、使用者が法第39条第1項から第3項までの規定による10労働日以上の有給休暇を基準日又は第一基準日に与えることとし、かつ、当該基準日又は第一基準日から1年以内の特定の日(以下この条及び第24条の7において「第二基準日」という。)に新たに10労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間をいう。以下この条において同じ。)の月数を12で除した数に5を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えることができる。

「基準日」は法定の付与日、「第一基準日」は前倒しで付与した日、「第二基準日」は前の付与日(基準日又は第一基準日)から1年以内に到来した付与日をいいます。

本規定により、基準日と次の基準日までの期間が1年以内の場合は、前後の期間を通算した期間を「履行期間」として、履行期間を通じてその長さに応じて年5日を按分した日数(12カ月で割って履行期間の月数を乗じた日数)の年次有給休暇を与えることができます。

通算期間(履行期間)に付与すべき日数 = 5日 ÷ 12カ月 × (履行期間の月数)

例えば、毎年1月1日を年次有給休暇の付与日としている会社が、2019年4月1日に入社した社員に入社当日(第一基準日)に10日の年次有給休暇を付与し、翌年1月1日(第二基準日)に11日の年次有給休暇を付与した場合には、2019年6月1日(第一基準日)から2020年12月31日(第二基準日から1年を経過する日)までの1年9カ月の間に9日(≒5日÷12カ月×21カ月)を与えることができます。

また、2019年1月1日に入社した社員に6か月経過後の7月1日(基準日)に10日の年次有給休暇を付与し、翌年1月1日(第二基準日)に11日の年次有給休暇を付与(第二基準日)した場合には、2019年7月1日(基準日)から2020年12月31日(第二基準日から1年を経過する日)までの1年6カ月の間に7.5日又は8日(≒5日÷12カ月×18カ月)を与えることができます。

この場合、履行期間における取得日数だけを見るため、それぞれの基準日から1年間の間に年次有給休暇を取得した日数は問題となりません。

なお、原則通りに基準日ごとにそれぞれ年5日の年次有給休暇を与えることとしても問題ありませんので、基準日から次の基準日までの期間が1年以内の場合には、次のいずれかによって年次有給休暇の取得義務を果たすことになります。

  1. それぞれの基準日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる(原則)
  2. 前の基準日から後の基準日から1年を経過する日までを通算した期間(履行期間)を通じて、年5日を按分した日数を取得させる(特例)

原則の方法と特例の方法のどちらによるのかを就業規則等に定めておく

原則の方法による場合と特例の方法による場合では最終的に使用者の時季指定によって取得させなければならない日数が異なります。この場合、時季指定しなければならない日数が「原則の方が特例よりも多い場合」と「原則の方が特例よりも少ない場合」が生じます。

「年5日(特例の場合は按分した日数)」は、使用者が時季指定を行ってでも付与しなければならない最低日数ですが、年5日を超える使用者による時季指定は元々労働者が持っている時季指定権を過剰に制限することになるため、これを超える日数を使用者が時季指定を行ってはならないという最大日数でもあり、あいまいな運用は「使用者による過大な時季指定」として法違反の指摘や労使トラブルを招くおそれがあります。

なお、特例による方法が、あらかじめ就業規則等に定めている場合に限って認められるのか、就業規則等の定めていなくても認められるのかには若干の疑義が生じるところですが、実務上は、結果として原則の方法又は特例の方法のいずれかによって必要な取得日数を満たしていれば、就業規則等への定めの有無に関わらず取得義務違反として法違反の指導が行われることはないと考えられます。

ただし、改善指導は行われる可能性があるほか、年次有給休暇に関する事項は就業規則の絶対的記載事項であるため、労基法第89条違反(就業規則の不備)を問われる可能性があります。

そのため、就業規則等においては

  1. 原則の方法によって取得させる(特例の日数を満たしたとしても原則の日数を満たすまでは使用者の時季指定を行う)
  2. 特例の方法によって取得させる(原則の方法を満たしたとしても特例の日数を満たすまでは使用者の時季指定を行う)
  3. 原則の方法又は特例の方法のいずれかを満たすまで使用者の時季指定を行う

のかを明確にしておくことが望ましいでしょう。

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