令和4年10月1日から育児休業期間中の社会保険料免除の要件が変更となりました。
育児休業期間中の社会保険料免除は、健康保険法第159条第1項に規定されています。
§健康保険法(保険料の徴収の特例)第159条 育児休業等をしている被保険者(第159条の3の規定の適用を受けている被保険者を除く。次項において同じ。)が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令で定めるところにより保険者等に申出をしたときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める月の当該被保険者に関する保険料(その育児休業等の期間が一月以下である者については、標準報酬月額に係る保険料に限る。)は、徴収しない。
- その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが異なる場合 その育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの月
- その育児休業等を開始した日の属する月とその育児休業等が終了する日の翌日が属する月とが同一であり、かつ、当該月における育児休業等の日数として厚生労働省令で定めるところにより計算した日数が14日以上である場合 当該月
2 被保険者が連続する二以上の育児休業等をしている場合(これに準ずる場合として厚生労働省令で定める場合を含む。)における前項の規定の適用については、その全部を一の育児休業等とみなす。
見直し後の社会保険料免除の要件は次のとおりです。
- 給与(標準報酬月額)の社会保険料免除(要件1、2)
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- 育児休業期間に月末日が含まれる場合は、月末日が含まれる月の社会保険料を免除
- 育児休業期間に月末日が含まれない場合は、育児休業日数が14日以上の場合にその月の社会保険料を免除
- 賞与(標準賞与月額)の社会保険料免除(要件3)
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- 育児休業期間が1か月を超える場合に、月末日が含まれる月に支払われた賞与に係る社会保険料を免除
要件1は従来からあった要件で、要件2と要件3が今回の見直しによって追加された要件です。
要件2は給与の社会保険料免除要件の緩和、要件3は賞与の社会保険免除要件の厳格化となっています。
令和4年10月1日から始まった産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合も、同じ要件による社会保険料免除が受けられます。
給与の社会保険免除要件は緩和
従来、給与の社会保険料は、育児休業期間に月末日が含まれる場合にのみ社会保険料免除を受けられましたが、要件2の追加によって、月末日を含まない場合でもその月における育児休業日数が14日以上であれば社会保険料免除を受けられるようになりました。
同一月内に複数回の育児休業を取得した場合は、合計で育児休業日数が14日以上であれば対象となります。
例えば、
- 10月2日~10月20日(19日間)の育児休業を取得した場合
- 10月2日~10月5日(4日間)と10月11日~10月20日(10日間)の育児休業を取得した場合
に、10月分の社会保険料が免除されます。
賞与の社会保険免除は厳格化
一方、賞与の社会保険料は免除要件が厳しくなりました。
従来の賞与の社会保険免除要件は要件1と同じだったため、賞与支払月の月末日の1日だけ育児休業を取得した場合でも社会保険料の免除が受けられましたが、育児休業期間が1か月を超える場合に限り社会保険免除が受けられるように変更されました。
例えば、6月16日~7月20日の育児休業を取得した場合は、育児休業期間が1か月を超えているため、6月支給賞与の社会保険料が免除されます。
なお、育児休業期間中に月末日が含まれる月に支給された賞与のみが免除対象である点に変更はなく、7月支給賞与の社会保険料免除は受けられません。
見直し後の社会保険料免除要件の主なポイント
要件1の免除を受けられる場合は、要件2の免除は受けられない
要件1は育児休業期間に月末日が含まれる場合、要件2は月末日が含まれない場合のため、1回の育児休業でこの2つの要件を同時に満たすことはありません。
例えば、10月30日~11月25日の育児休業を取得した場合は、要件1によって10月分の社会保険料が免除されます。
11月中に14日以上の育児休業を取得していますが、育児休業期間に月末日(10月31日)が含まれているため、要件2による11月分の社会保険料免除は受けられません。
複数回の育児休業を連続して取得した場合は、一つの育児休業として取り扱う
複数の育児休業を連続して取得した場合は、全体を通じて一つの育児休業期間として取り扱います。
例えば、「6月2日~6月28日」と「6月29日~7月3日」の育児休業を取得した場合は、「6月2日~7月3日」の育児休業を取得したものとして取り扱うため、要件1と要件3により、6月分の社会保険料と6月支給賞与の社会保険料が免除されます。
前後の育児休業が連続していない場合でも、その間が全て休日や年次有給休暇の取得日のため就労日が全くない場合は、実質的に連続して育児休業を取得しているものと判断され、同様に全体を通じて一つの育児休業期間として取り扱われます。
産後パパ育休中の労使協定に基づく就業日数は「14日以上」から除外される
要件2の「育児休業日数が14日以上」は、休日や一時的・臨時的に就労した日については除外することなくカウントしますが、産後パパ育休において認められている労使協定に基づく就業日は「14日以上」から除外されます。
労使協定に基づいて時間単位で就業した場合は、就業時間数を1日の所定労働時間で除した数(1未満は切捨て)を就業日数として除外します。
同じ就労日であっても、「一時的・臨時的に就労した日」は除外されず、「労使協定に基づいて就業した日」は除外されることに注意してください。
賞与の社会保険料免除が受けられるのは「1か月以上」ではなく「1か月超」
要件3によって賞与の社会保険料免除が受けられるのは「1か月を超える場合」のため、育児休業期間が1か月ちょうどだと免除対象になりません。
そのため、給与計算期間等にあわせて「6月1日~6月30日」「6月16日~7月15日」のように1か月間の育児休業を取得した場合は、賞与(この場合だと6月賞与)の社会保険料免除は受けられません。
6月賞与の社会保険料免除を受けるためには、「6月1日~7月1日」「6月16日~7月16日」のように、少なくとも開始日と同じ日(=応当日)までの育児休業を取得する必要があります。
なお、「1か月超」は暦日で判定されます。
休日や一時的・臨時的に就労した日があっても除外する必要はなく、開始日と終了日のみで判断をして問題ありません。
【参考】育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A(厚生労働省)