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東京労働局が電通を労働基準法違反で書類送検。わずか1ヶ月半の異例のスピード。

多くの役所や会社が仕事納めとなる12月28日、東京労働局(三田労働基準監督署の上部機関)は、労働基準法違反の疑いで、法人としての電通と、過労自殺した女性新入社員の当時の上司を書類送検しました。

強制捜査の着手からわずか1ヶ月半での立件は異例のスピード

労働基準法違反の立件は、刑事訴訟法の規定に基づいて厳正な手続きを踏む必要があるため、調べなければならないことや作成しなければならない資料も膨大なものとなり、通常は数ヶ月~1年程度の捜査期間を要します。

今回、東京労働局が強制捜査に着手したのが11月7日であり、わずか1カ月半という期間での立件は、ニュースでも報じられている通り異例のスピードと言えます。

東京労働局の担当課長は、会見で、今回の事件の注目度や重大性を考慮し、送致できるものから直ちに送致するという観点で立件を行ったと述べ、異例の対応であることを認めています。

また、亡くなった女性社員の命日(12月25日)を意識したのかという記者からの質問に対しても「ないわけではない」と述べるなど、年内の立件にこだわっていた様子がうかがい知れます。

直属の上司が書類送検されたのは両罰規定で会社を立件するため

労働基準法違反は、業務に関して違反行為を行った者に対して適用されます。

会社(法人)の場合、自然人ではない会社が業務に関して違反行為を行うことは有り得ない(会社自身が業務を行っているわけではない)ため、会社に対して直接には労働基準法違反を問うことは出来ません。

そこで、労働基準法第121条には、「両罰規定」と呼ばれる次のような規定が定められています。

§労働基準法

第121条 この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。(以下略)

会社組織の場合は、会社(法人)が同条の「事業主」にあたります。

つまり、法人である会社そのものを労働基準法違反で立件しようとする場合には、実際の業務で違反行為を行った者(社長や上司など)の違反行為を特定して立件し、両罰規定に基づいて会社も立件するという流れになります。

本来、大規模な会社において組織的な違法労働が常態化していたことが疑われる場合には、社長や取締役などの上層部を書類送検することを目指して捜査を進めることになります。

しかし、社員に対して直接指揮命令を行っていたわけではない者の違反行為を立証することは容易ではありません。

今回は、電通という会社(法人)を年内に立件することにこだわった結果、違反行為の特定が最も容易である直属の上司を先に書類送検することとして、そこに両罰規定を適用することにしたものと考えられます。

全容解明を目指して今後も捜査は継続へ

今回の書類送検は、年内の立件にこだわった結果であり、会社全体で組織的な違法労働が常態化していたことの全容が解明されたとは言えません。

直属の上司が書類送検されただけで終わってしまったのでは、むしろトカゲのしっぽ切りのような印象さえも与えかねません。

東京労働局は、今後も全容解明を目指して捜査を継続するとしており、引き続き社長や取締役などの上層部の立件を目指していくものと思われます。

今後の捜査がどのように進んでいくのかについては引き続き注目していきたいと思います。

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