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1年単位の変形労働時間制の「期間途中の入社・退職者の賃金清算」とは?

1年単位の変形労働時間制では、

  1. 1日の労働時間が、あらかじめ定めたその日の所定労働時間と8時間の長い方の時間を超える
  2. 週の労働時間が、あらかじめ定めたその週の所定労働時間と40時間の長い方の時間を超える
  3. 変形期間中の労働時間が、週平均40時間を超える

のいずれかに該当する場合に、当該超えた時間が時間外労働となります。

ただ、例えば1~6月を繁忙月のため1日9時間(週45時間)、7~12月を閑散月のため1日7時間(週40時間)とした年間カレンダーが作成されていた場合、6月までに退職した者は、週平均40時間を超える労働を行ったにもかかわらず時間外手当が全く支払われないことになってしまいます。

1~6月が閑散月、7~12月が繁忙月で、7月以降に中途入社した者も同様です。

そのため、労働基準法第32条の4の2では、1年単位変形労働時間制の期間の途中に入社や退職した者の賃金清算を規定しています。

勤務した期間を平均して週40時間を超える時間について割増賃金の清算が必要

労働基準法第32条の4の2の規定は次の通りです。

§労働基準法

(賃金清算)
第32条の4の2 使用者が、対象期間中の前条の規定により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第33条又は第36条第1項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。

当該労働させた期間を平均し1週間当たり40時間」は、「40時間 × 勤務期間の歴日数 ÷ 7日」です。

これを超えた時間が賃金清算が必要な時間となりますので、

(賃金清算時間)= 勤務期間中の総労働時間(時間外労働、休日労働を除く)-(40時間 × 勤務期間の歴日数 ÷ 7日)

となります。

賃金清算として支払うのは割増賃金の割増部分のみ

賃金清算時間は、変形期間の途中においては所定労働時間として賃金計算済みであるため、本条の清算によって支払わなければならない賃金は割増部分(25%部分)になります。

例えば、時給1,000円の従業員について、ある月の労働時間が200時間(時間外労働なし)だった場合、通常の賃金として、

1,000円 × 200時間 = 200,000円

が支払われます。

この従業員が変形期間の開始から1カ月(30日間)で退職した場合、賃金清算時間は、

200時間 -( 40時間 × 30日 ÷ 7日 )≒ 29時間

となります。

この時間に対して割増賃金(125%)の支払いが必要となるため、賃金清算後の当月の賃金額は、

1,000円 × 171時間 + 1,250円 × 29時間 = 207,250円

です。

このうち、200,000円はその月の通常の賃金として支払済みであるため、

207,250円 - 200,000円 = 7,250円

が、賃金清算によって支払いが必要な金額です。

これは、割増部分(1,000円×25%=250円)の29時間分に相当します。

休暇や休職によって週平均40時間を超えることなった場合は賃金清算の対象とならない

本条の賃金清算は、期間途中の入社や退職など、雇用契約期間が変形期間よりも短い従業員についての規定であり、休暇中の休業中の従業員には適用されません。

前述の例において、従業員が退職ではなく休職に入った場合は、休職開始までの労働時間が週平均40時間を超えていたとしても、本条による賃金清算の対象とはなりません。

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制においても同様の清算ルールあり

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制においても同様の規定(労働基準法第32条の3の2)が設けられており、期間途中での入社や退職した者の賃金清算が必要です。

一方、1か月単位の変形労働時間制や清算期間が1か月以内のフレックスタイム制など、変形期間や清算期間が1か月以内の制度においては、賃金清算はありません。

1年単位変形労働時間制カレンダーの無料作成ツール

社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントが運営するツール集サイト「社労士Tools」では、ブラウザ上で1年単位変形労働時間制のカレンダーを作成できる無料ツールを公開しています。

祝日の自動取得機能や要件チェック機能により、要件を満たしたカレンダーが簡単に作成できます。

是非ご利用ください。

1年単位の変形労働時間制カレンダー簡単作成ツール(https://tool.shlc.jp/1year_henkei/

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