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政府が残業規制の新制度案を公表。年の残業上限は720時間に。

新制度案は原則が年360時間、特例適用で年720時間

政府は、2月14日に開いた働き方改革実現会議で、長時間労働是正のための新制度案を提示しました。 政府が示した新制度案は、

というものです。

特例で認められる年間720時間(月平均60時間)は、過労死の認定基準となる労働時間が「直近2~6ヶ月の平均残業時間で月80時間超」であることを踏まえて、ワーク・ライフ・バランスを改善することを目指す時間として定められているとのことでした。

新制度案における残業時間の実質的な上限は年720時間

今回の新制度案では、残業時間の上限を原則として年間360時間とし、労使協定を締結しなければそれを超えて残業を行わせることが出来ないこととされています。

しかし、現在のように長時間労働が全国的な社会問題となっている原因には、現在の残業時間規制制度である36協定(時間外・休日労働に関する協定届)が、ほとんど機能していないことにあります。

36協定は、労使協定によって労働者側が合意した時間までしか残業を行えないようにすることで残業時間を抑制しようとするものですが、実際には、労働者側の意向が労使協定の内容に反映されることがほとんどなく、会社の意向に基づいて実質的にほぼ無制限の残業が可能となってしまっています。

新制度案において、会社から特例適用の労使協定の締結を持ちかけられた場合に、労働者側がそれを拒否できるケースは多くないでしょうから、実質的な残業時間数の上限は、原則の年間360時間ではなく、特例適用の年間720時間ということになるでしょう。

新制度案でも過労死ラインを超える時間外労働を行わせることが可能?

現在の36協定において、時間外労働(いわゆる残業)と法定休日労働は別個の物として取り扱われており、月45時間や年間360時間という上限時間の中に、法定休日労働の時間は含まれません。 (法定外休日の労働時間は、時間外労働の時間(月45時間や年360時間)に含まれます。ここではとりあえず、週1日の休日が法定休日、それ以外に与えられている休日が法定外休日と考えてください。)

現在のところ、法定休日労働を行わせることが出来る回数に法律上の制限はなく、36協定で法定休日労働に関する内容を締結していれば、月45時間までの時間外労働とは別に法定休日労働を行わせることが可能です。

新制度案で検討されている時間外労働の上限時間の考え方が、現在の時間外労働の上限時間の考え方と変わらないのであれば、会社は、労働者に、年間720時間の時間外労働とは別に法定休日労働を行わせることが出来ることになります。

つまり、新制度案で時間外労働の上限を720時間に制限したとしても、そこに法定労働休日が含まれていなければ、会社は、労働者に法令に違反しない範囲で過労死ラインを大幅に上回る月120時間超や年間1000時間超の時間外労働を行わせることが可能と言えます。

法定休日労働の取り扱いがどのように議論されているのかは別途確認が必要ですが、いずれにせよ今回の制度改正では大幅な残業規制とはならないと思われます。

結局のところ、政府が考える働き方改革が実現した後も、長時間労働を防止できるかどうかは、その会社の考え方次第ということになるのではないでしょうか。

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