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厚生労働省が法改正後の36協定に関する指針案を公表。その内容は?

厚生労働省は平成30年8月9日、「労働基準法第36第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針案(イメージ)」を公表しました。

【厚生労働省HP】労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働に ついて留意すべき事項等に関する指針案(イメージ)

同指針案は、法改正後の36協定で定める労働時間の延長や休日労働について留意すべき事項や必要な事項を定めたもので、次の9項目で構成されています。

  1. 目的
  2. 労使当事者の責務
  3. 使用者の責務
  4. 業務区分の細分化
  5. 限度時間を超えて延長時間を定めるに当たっての留意事項
  6. 1箇月に満たない期間についての延長時間の延長
  7. 休日の労働を定めるに当たっての留意事項
  8. 健康確保措置
  9. 適用除外等

指針案の位置付け

改正労基法の第36条第7項は、厚生労働大臣が労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な指針を定めることができると規定しており、今回示された指針案は同規定に基づいて作成されたものになります。

§労働基準法

第36条第7項 厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。

従来は、厚生労働大臣によって「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年12月28日労告154、最終改正平成21年5月29日厚労告316)が定められていました。

いわゆる「限度基準告示」であり、36協定で定めることができる延長時間の限度時間などが規定されていましたが、限度時間が労基法に直接明記されることになったことなどに伴ない、限度基準告示が廃止されて、これに代わる新しい指針が示されることになりました。

指針案の概要

(1)目的

指針案が定められた目的です。

内容は労基法第36条第7項とほぼ同内容であり、36協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項を定めることにより、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとすることが目的として明記されています。

(2)労使当事者の責務

協定締結の当事者である使用者と労働者の過半数代表者の双方に対し、

に十分留意して36協定を締結すべき努力義務を定めています。 臨時的な理由がある場合には月100時間未満、年720時間以下の時間外労働が可能な36協定を締結することができますが、これらの上限ぎりぎりまで働かせることを容認する趣旨ではないことを明確にしたものと言えます。

(3)使用者の責務

36協定の範囲内で行った時間外労働等であっても、使用者は労働契約法第5条の安全配慮義務を免れず、また、過労死の労災認定は行われ得ることを明記しています。

36協定に違反していなければ、使用者は、労基法違反(刑事上の責任)は問われませんが、過労死等が発生した場合の損害賠償責任(民事上の責任)まで免れることはできません。

「36協定に違反していなければ過労死が起きても使用者は責任を問われない」「36協定の範囲内であれば過労死の労災認定がされない」という誤解が生じていることから、これをけん制する狙いがあります。

(4)業務区分の細分化

従来の限度基準でも定められていた項目です。

時間外労働等を行わせようとする業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければなりません。

(5)限度時間を超えて延長時間を定めるに当たっての留意事項

限度時間(月45時間、年360時間)を超えて時間外労働等を行わせる理由は、臨時的なものに限られ、出来る限り具体的に定めなければならないとしています。

また、限度時間を超える延長時間については、限度時間に出来る限り近づけるよう努めなければならないことを明記することで、「(2)労使当事者の責務」と同様に、月100時間や年720時間などの上限ぎりぎりまで働かせることを容認する趣旨ではないことを明確にしています。

限度時間を超えて行わせた時間外労働に対して支払う割増賃金を通常よりも率を引き上げるように努めなければならないとされたことは、従来の限度基準と変わりありません。

(6)1箇月に満たない期間についての延長時間の目安

法改正後は、必ず1か月の延長時間を36協定で定めなければなりません。

有期契約労働者などで雇用期間が1か月未満となる場合に、その期間中に限度時間(月45時間)の時間外労働を行わせても違法ではありませんが、その期間に応じた目安時間(1週間15時間・2週間27時間・4週間43時間)を超えないような延長時間を定めるように努めなければならないと規定してます。

(7)休日の労働を定めるに当たっての留意事項

時間外労働だけでなく、休日労働の回数及び時間も出来る限り少なくするように努めなければならないことを規定しています。

(8)健康確保措置

法改正後の36協定では、限度時間を超える時間外労働を行わせる場合の健康確保措置を定めなければなりません。

健康確保措置の内容として次の9つのうちから協定することが望ましいとしています。

  1. 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。
  2. 法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月に ついて一定回数以内とすること。
  3. 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。
  4. 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を 付与すること。
  5. 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。
  6. 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその 取得を促進すること。
  7. 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
  8. 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署 に配置転換をすること。
  9. 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等に よる保健指導を受けさせること。

(9)適用除外等

新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については、労基法第36条第11項によって限度時間などの上限規制に関する規定の適用除外とされたため、指針についても上記(5)(6)は適用されず、また、(8)の健康確保措置の規定も適用されません。

ただし、これも無制限に時間外労働等を行わせてもよいという趣旨ではないため、限度時間を勘案した上限時間を定めることが望ましく、健康確保措置を定めるように努めなければならない旨を規定しています。

5年間の適用猶予期間が設けられた「自動車運転手」「建設事業」「医業に従事する医師」等についても、当該期間中は上記と同様の措置を講じることが望ましいことが明記されています。

指針は平成30年9月に交付される予定

指針案は労働政策審議会において大筋で了承されており、平成30年9月を目途に交付される予定となっています。

指針に法的な強制力はありませんが、内容を正しく理解して適切な対応を講じていくことが求められます。

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