相次いで報じられた長時間労働による労災認定
10月7日に電通の女性新入社員が長時間労働の末自殺して労災認定されたことがニュースで報じられましたが、それから約2週間が経過した10月20日に、電通で3年前にも当時30歳の男性社員が長時間労働が原因の過労死(病死)として労災認定されていたことと、関西電力の課長職の男性社員が今年の4月に自殺した原因が長時間労働によるものとして労災認定されていたことが相次いで報道されました。
電通の女性新入社員の自殺や関西電力の課長職の男性職員の自殺は、長時間労働やパワハラなどの業務上の心理的負荷によって精神障害をきたしたと認められるため労災認定されたもの、電通の男性社員の病死は、病気(脳血管疾患または虚血性心疾患)の発症の原因が長時間労働と関連が高いと認められるため労災認定されたものです。
精神障害と脳血管疾患・虚血性心疾患のいずれも、その発症には業務上の要因以外にも様々な要因が影響しているのが通常です。
そのため、国では、精神障害については「心理的負荷による精神障害の認定基準」を、また、脳血管疾患または虚血性心疾患については「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」を定め、これらの基準に照らし合わせて、その発症が労災と認められるかどうかの判断を行っています。
電通の女性新入社員の自殺はめったに起こらないレアケースではない
長時間労働の問題は、その弊害についてはわかっていながら、これまでなかなか本格的な議論がされてきませんでしたが、電通の女性新入社員のニュースによってにわかに表立って騒がれるようになりました。
ただ、今回の電通の女性新入社員の自殺は、決してめったに起こらないレアケースというわけではありません。
厚生労働省の発表によると、平成27年度に長時間労働によって脳血管疾患または虚血性心疾患を発症したとして労災認定された件数は257件(不認定になったあと審査請求・再審査請求・訴訟等で支給決定されたものを含む。以下同じ。)あり、そのうち101件が死亡事案です。
また、平成27年度に業務上の心理的負荷によって精神障害を発症したとして労災認定された件数は493件あり、そのうち、自殺しているものは106件ありました。
つまり、平均で毎週2人の労働者が長時間労働が発症の主たる要因と認められる脳血管疾患や虚血性心疾患で亡くなり、毎週2人の労働者が業務上の心理的負荷によって自殺した、として労災認定がされています。
その中で、今回、電通の女性新入社員の自殺の労災認定をマスコミ各社が大々的に報じたのは、電通という名が通った大企業であること、電通が過去にも同様の自殺事案(いわゆる「電通事件」)を起こしていること、被害女性が東大卒の前途有望な若者であることなどが影響しているのでしょう。(遺族や代理人弁護士が記者会見を行ったというのもあると思います。)
政府には、一度高まったこの機運を逃さずに、積極的な対策を打ち出して行ってもらいたいと思います。
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