年金の受給を開始した後も会社勤めを行った場合、会社から受ける賃金(報酬)の額に応じて老齢厚生年金の支給額を減額(支給停止)されることがあります。

この仕組みを「在職老齢年金制度」と言います。

いったいどれぐらいの減額がされるのでしょうか。

支給停止される年金額は65歳未満と65歳以上で異なる

支給停止される年金額の計算方法は、65歳未満の年金受給者と65歳以上の年金受給者で異なります。

65歳未満の年金受給者の支給停止額

65歳未満の年金受給者の支給停止額(年額)は、基本月額(⇒年金月額)と総報酬月額相当額(⇒月当たりの賃金相当額)によって次のようになります。(平成29年3月現在)

①基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以下
⇒ 支給停止なし(全額支給)
②基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円以下
⇒ (総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2×12
③基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円超
⇒ {(47万円+基本月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-47万円)}×12
④基本月額が28万円超で、総報酬月額相当額が47万円以下
⇒ 総報酬月額相当額×1/2×12
⑤基本月額が28万円超で、総報酬月額相当額が47万円超
⇒ {47万円×1/2+(総報酬月額相当額-47万円)}×12

65歳未満の支給停止額の仕組みは、

  • 原則として、年金支給額と賃金額の合計で月28万を超えた部分の半分が支給停止額となる
  • 年金支給額が多い場合、28万円を超える部分は支給停止の対象としない
  • 支払われる賃金額が多い場合、47万円を超える部分の全額が支給停止額に反映される

というイメージです。

社労士試験を受験する方であれば、上の5つの式を丸暗記するよりもイメージの方を理解しておきましょう。

65歳以上の年金受給者の支給停止額

65歳以上の年金受給者の支給停止額(年額)は、次のようになります。(平成29年3月現在)

(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×1/2×12

年金支給額と賃金額の合計が47万円を超える場合に、超えた部分の半分が支給停止されます。

65歳未満の場合と比べて計算方法が随分シンプルになりました。

支給停止が行われることになる年金支給額と賃金額の合計額も、65歳未満のときよりも大幅に引き上げられています。

なお、計算式に出てくる28万円や47万円という金額は見直しが行われることがあります。

老齢基礎年金は支給停止の対象にならない

在職老齢年金の計算を行う上でいくつか押さえておくポイントがあります。

まず、在職老齢年金制度で支給停止の対象となる年金は、

  • 特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)
  • 特別支給の老齢厚生年金(定額部分)
  • 老齢厚生年金

のみとなります。

老齢基礎年金は支給停止の対象とはなっておらず、支給停止額の計算式の年金額(基本月額)にも含まれません

そのため、厚生年金に加入したことがなく老齢基礎年金しか支給されない人(ずっと国民年金に加入していた人)であれば、60歳以上で会社勤めをすることになっても年金の支給停止はされません。

加給年金は老齢厚生年金が全額支給停止になった場合にのみ支給停止になる

一定要件に該当する扶養者がいる場合に老齢厚生年金に加算して支給される「加給年金」は、支給停止額の計算式の年金額(基本月額)には含まれません。

在職老齢年金制度により老齢厚生年金の一部が支給停止になったとしても、加給年金は全額支給されます。

ただし、老齢厚生年金の全額が支給停止になった場合は加給年金も全額支給停止になります。

加給年金は老齢厚生年金に「加算」して支払われるものであるため、加算対象となる老齢厚生年金の支給がないのであれば加給年金も支給しないということですね。

会社勤めをしても厚生年金に加入していない場合は支給停止にならない

在職老齢年金制度は、老齢厚生年金を受給しながら老齢厚生年金に加入している人が対象になります。

そのため、会社勤めをして賃金が支払われたとしても、パート勤務で勤務時間が短かい場合や社会保険の適用がない事業場で勤務する場合など、厚生年金に加入しない働き方の場合は年金の支給停止は行われません

自分自身が個人事業主となって収入を得ている場合も厚生年金に加入していませんので、在職老齢年金制度による支給停止はありません。

支給繰下げを行った場合も支給停止は行われる

老齢厚生年金は、支給開始年齢を65歳から最大5年間繰り下げることが出来る制度が設けられています。

支給開始年齢を1ヶ月繰り下げる毎に年金支給額が0.7%増加し、5年間繰り下げて支給開始年齢を70歳にした場合は、以降の年金支給額が42%(=0.7%×60月)増加します。

勘がいい方であれば、「働きながら年金を受給すると年金が減額されてしまうのなら、働いている間は年金を受給しないで繰り下げてしまおう」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、在職老齢年金制度による支給停止に該当する人が支給繰下げを行った場合、支給繰下げによる増加は支給停止後の年金支給額を基に行われるため、支給繰下げによって支給停止を回避することは出来ません。

例えば、老齢厚生年金の支給額が年100万円、在職老齢年金制度による支給停止額が年20万円の人が5年の支給繰下げを行った場合、42%の増加は、100万円ではなく80万円(=100万円-20万円)に対して行われ、支給増加額は33.6万円(=80万円×42%)となります。

年金を受けながら働くとその期間中は年金支給額が減額されますが、賃金額と年金支給額をあわせた総収入額は多くなりますし、勤務を辞めた後の年金支給額が増加するメリットもあります。

ご自身のライフプランにあった働き方を是非見つけてください。