ハローワークの求人票や求人情報誌に掲載されている労働条件が、面接時に提示された労働条件や勤務開始後の実際の労働条件と異なっていることでトラブルに発展するケースは後を絶ちません。

そんな中、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会の労働力需給制度部会は、賃金などの労働条件を偽ってハローワークなどに求人を出した会社に罰則を科すことを盛り込んだ報告書をまとめました。

報告書を踏まえ、厚生労働省が罰則の内容などの検討を行い、2017年の通常国会に職業安定法の改正案を提出する見込みです。

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労働条件を偽って求人を出したことの立証は困難

これまでも、職業紹介を行う事業者に対しては、虚偽の条件で仕事をあっせんした場合の罰則規定が設けられていましたが、求人を行った会社に対しても罰則規定が設けられることで、一定の抑止力が働くことが期待されます。

ただ、労働条件を偽って求人を出した会社に対して、実際に罰則規定を適用するのは一筋縄ではいかないでしょう。

例えば、会社には求人票に記載した労働条件で雇用するつもりが最初からなかったことを立証しなければなりませんが、その立証は非常に困難と考えられます。

会社で同種の業務に従事している労働者の労働条件が求人票の労働条件よりも低い場合などは状況証拠になり得ると考えられますが、直ちに立証できるだけの証拠とは言えないでしょう。

「契約自由の原則」は尊重されなければならない

また、労働基準法のような強行法規に反しない限り、当事者間による「契約自由の原則」は尊重されなければならず、会社が、労働者との面接によって能力や経験などを総合的に判断した結果として、求人票の労働条件より低い労働条件を提示することまでを禁止することは困難です。

能力や経験が求人票に記載した要件に満たない求職者からの応募に対しても積極的に面談を実施し、能力などに見合った労働条件を提示している会社も少なからず存在します。

そのような会社にとっては、虚偽の募集条件として法違反の指摘を受ける危険性が生じることから、募集要件に満たない労働者からの応募は受け付けなくなり、結果として、求人の門戸が今より狭まる可能性もあります。

必ず労働条件通知書の交付を受けるか雇用契約書の締結を

罰則が設けられたとしても、刑事事件として会社に対して罰則が適用されるだけで、民事の問題としては被害に遭ってしまった労働者が直ちに救済されるわけではありません。

したがって、求人詐欺による被害に遭わないようにするために、自分自身で対策を講じる必要があることに変わりはありません。

そのためにも、入社の際は必ず、会社から労働条件通知書の交付を受けるか、雇用契約書を取り交わし、労働条件を書面で明確に残しておきましょう

労働条件通知書や雇用契約書を要求しても交付されないのであれば、その会社には入社すべきではありません。

時給1,000円、週40時間の1年契約であれば、会社と労働者は208万円もの金額の契約を結んでいることになります。

これだけの契約を書面もないまま締結することのリスクをしっかり認識しておきましょう。

職業安定法違反を取り締まるのは労働基準監督官ではない

職業安定法の改正によって労働条件を偽って求人を出した会社に対する罰則が設けられた場合、その違反を取り締まるのは、労働基準監督署ではなく一般の警察署になります。

労働基準監督官は、労働基準法や労働安全衛生法など、一定の法律に対する違反に対する捜査権限を持っていますが、その中に職業安定法は含まれていません。

求人トラブルも労働問題の範疇に含まれるためよく誤解されますが、是非知っておいてください。