「マイナンバー法」(手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の施行に伴い、今年の年末調整から、従業員は、マイナンバーを記載した扶養控除等申告書を会社に提出することが必要となりました。

しかし、従業員が、マイナンバー制度に対する不信感や個人情報漏洩の危険性を理由に、マイナンバーの提出を拒否する場合も少なくなく、労務担当者の中には、その対応に苦慮されている方もいらっしゃるようです。

そもそも、年末調整などで会社からマイナンバーの提出を求められた従業員は、その提出を拒否することは出来るのでしょうか。

マイナンバーの提出を拒否することは原則として認められない

マイナンバー法では、マイナンバーの収集制限や、収集後の管理義務についての規定が定められていますが、従業員が会社からの求めに応じてマイナンバーを提出しなければならないという義務は規定されていません。

そのため、法律上は、従業員がマイナンバーの提出を拒否することは可能です。

しかし、従業員と会社が相互に果たすべき義務は、そのすべてが法律の義務規定に基づいて生じているわけではなく、雇用契約関係において明示的又は暗黙的に発生します。

会社は、従業員を雇用しているために生じた法律上の届出義務を果たすために、記載事項を知ることが出来る唯一の手段として、その従業員に対してマイナンバーの提出を求めています。

それに対し、従業員が法律上の義務規定がないことを理由にマイナンバーの提出を拒否することは、当然に認められるべきというものではないでしょう。

少なくとも、従業員には、信義則に基づいて会社に協力すべき雇用契約関係上の義務があると言えます。

したがって、法律に義務規定がないことは必ずしも従業員がマイナンバーの提出を拒否する正当な理由とはならず、従業員がマイナンバーの提出を拒否することは原則として認められません。

従業員本人が届出義務者の場合も

また、届出の種類によっては、会社に提出するものであっても、従業員本人が届け出義務者である場合もあります。

例えば、記事冒頭の扶養控除等異動申告書は、所得税法第194条で、国内において給与等の支払を受ける居住者(=従業員)が『給与等の支払者を経由して』所轄税務署長に提出しなければならないと規定されています。

つまり、マイナンバーを記載した扶養控除等異動申告書を会社に提出しないことは、従業員本人が、法律上の義務を果たしていないことになります。

マイナンバーの提出を拒否するのもやむを得ない

とは言え、従業員が、マイナンバー制度に対して不信感を持つこともやむを得ません。

昨年6月、日本年金機構(年金事務所)が、個人情報の不適切管理によって年金情報を流出させたことがきっかけで、社会保険手続きにおけるマイナンバーの利用が急遽延期されました。

この問題の後、日本年金機構は、各地の年金事務所の端末に保存していた個人情報を「すべて削除した」と報告していましたが、報告後も個人情報の不適切管理が行われている年金事務所があったことが、先日(12月17日)のニュースで報じられました。

このような状況のため、従業員が、個人情報の漏えいを恐れてマイナンバーの提出を拒否することにも一定の理由があると言わざるを得ないのが実情です。

マイナンバーの提出が拒否された時は確認書の提出や経過の記録を

一方、現在のところ、税務署やハローワークは、マイナンバーが記載されていない提出書類であっても、受理する方針を示しています。

そのため、会社が、マイナンバーの提出が得られるように努めたにもかかわらず、それでもなおマイナンバーの提出を頑なに拒否する従業員がいる場合には、会社は、それ以上マイナンバーを提出させることにこだわる必要はありません。

ただし、従業員に提出拒否の確認書を提出させたり、会社が従業員にマイナンバーの提出を求めた経過等を記録したりすることによって、単なる義務違反ではないことを明確にしておき、税務署やハローワークなどから問い合わせがあったときには、その経緯や正当性を説明できるようにしておきましょう。

(この記事は「SmartHR mag.」に掲載された筆者記事を再構成して掲載しています。)