年次有給休暇は労働基準法第39条に労働者の権利として規定されています。
厚生労働省が公表した「平成28年就労条件総合調査の概況」によると、平成 27 年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数は労働者1人平均 18.1 日、そのうち労働者が取得した日数は 8.8 日、取得率は 48.7%となっており、付与された日数の半分以上は取得されずに未消化となっています。
ただ、多くの労働者が、退職時には未消化の年次有給休暇をまとめて取得したいと考え、会社がこれを拒否してトラブルになるケースが少なくありません。
退職時に、未消化の年次有給休暇をまとめて取得することは可能なのでしょうか。
退職前に年次有給休暇をまとめて取得することは可能
結論から言うと、年次有給休暇は労働者の権利ですので、退職時に未消化の年次有給休暇をまとめて取得することは可能です。
ただし、取得ができるのは退職日までの所定勤務日に限られ、休日に使用することはできません。
退職日までに取得しきれなかった年次有給休暇は消滅します。
使用者は、消滅する年次有給休暇を買い取ることが可能ですが、買い取る義務はありません。
使用者が時季変更権を行使することは事実上困難
労働者から請求された時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合、使用者は、労働者から請求された時季を変更して年次有給休暇を与えることが出来る「時季変更権」が認められています。
しかし、退職日までの全ての日について年次有給休暇を取得することを請求された場合には、時季を変更して与える日がないため、時季変更権の行使はできません。
使用者に認められているのは「時季を変更する権利」であり「請求を拒否する権利」ではないことに注意してください。
どうしても勤務してもらう必要がある場合には、労働者本人の理解を得て請求を取り下げてもらう必要があります。
未消化の振替休日は賃金支払いの請求が可能
未消化のまま累積している振替休日についてはどうでしょうか。
振替休日では、代わりの休日が与えられることを理由に、休日出勤を行わせた日(元々休日で振替によって出勤させた日)の賃金が支払われていません。
未消化となっている振替休日の累積は、「代わりの休みが与えられていないにも関わらず休日出勤を行った日の賃金が支払われていない状態」であり、賃金不払いが発生している状態に他なりません。
そのため、退職日までに取得できなかった振替休日について、退職者は、賃金の支払いによる清算を請求することが可能です。
未払い賃金の請求は退職日以降でも請求できます。
ただし、3年間の消滅時効にかかってしまった場合には請求することができなくなります。
年次有給休暇は退職によって請求権が消滅しますが、振替休日は退職後も賃金支払いとして請求することができます。
年次有給休暇と振替休日のどちらも残っている場合には振替休日よりも先に取得したほうが労働者にとって有利となります。