出産日当日は「産前」と「産後」のどちらに含まれる?

労働基準法第65条第1項、第2項は、産前産後休暇について次のように規定しています。

§労働基準法

(産前産後)
第65条 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

出産日当日は、産前期間(産前休暇)に含まれます。

子どもはすでに生まれているのに、なぜ出産日当日は産前期間に含まれるのでしょうか。

期間の計算は「翌日起算」が原則

民法第140条及び第141条は、日、週、月又は年における期間の起算と満了について定めています。

§民法

(期間の起算)
第140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前0時から始まるときは、この限りでない。

(期間の満了)
第141条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

本条により、期間の初日は、0時から始まっている場合(0時から24時までの丸々24時間がある場合)を除いて期間計算に算入されません。

その翌日を1日目として数え始める「翌日起算」が原則となります。

ただし、本条はあくまで原則であり、起算日について特段の定めをした場合はその定めに従います。

日常生活においては、期間の初日が何時から始まっていたとしても1日目として数え始める「当日起算」となっていることが少なくありません。

例えば、会員登録をした日から1年間、会員サービスを受けられるという場合、会員登録した日を初日とする当日起算で期間計算がされていると言えます。

産前産後期間は民法の原則に従い「翌日起算」で計算する

産前期間や産後期間については、起算日に関する特別の定めがありません。

そのため、民法の原則に従って期間計算を行います。

出産日当日は、「産前期間の末日」です。

民法第141条により、出産日当日の終了(24時)をもって産前期間が終了しますので、出産日当日は産前期間に含まれます。

出産日当日は、「産後期間の初日」でもあります。

産後期間が出産日の0時から始まっているわけではないため、出産日当日は産後期間には算入されず、その翌日を1日目として数え始めます。

以上により、出産日当日までが産前期間であり、出産日の翌日からが産後期間となります。

出産日当日は「子は生まれているがまだ産んでいない日」

なお、年齢計算ニ関スル法律第1項は、年齢の起算日について次のように定めています。

§年齢計算ニ関スル法律

第1項 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算

年齢を民法の原則に従って翌日起算(出生日の翌日から)で数えようとすると、出生日当日が法律上まだ生まれていないことになってしまい、いろいろと不都合があるであろうことは想像に難くありません。

そのため、本条によって、出生日を1日目として数え始める「当日起算」とされています。

法律上、出産日当日は「子どもはすでに生まれている(当日起算)が、まだ産前である(翌日起算)」というちょっと不思議な日となります。