雇用保険法と育児介護休業法における「1歳に満たない子」の違いとは?

雇用保険法第61条の7は、育児休業給付金について規定しています。

§雇用保険法 (育児休業給付金)

第61条の7 育児休業給付金は、被保険者が、厚生労働省令で定めるところにより、その1歳に満たない子を養育するための休業をした場合において、当該休業を開始した日前2年間に、みなし被保険者期間が通算して12箇月以上であつたときに、支給単位期間について支給する。(一部省略)

(第2項以下 省略)

また、育児介護休業法第5条第1項は、育児休業の申出について規定しています。

§育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

(育児休業の申出)
第5条第1項 労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。

どちらも「1歳に満たない子」という記載がありますが、それぞれ意味するところが少しだけ異なります。

それぞれどのような意味で使用されているのでしょうか。

雇用保険法の「1歳に満たない」は「誕生日の前々日まで」

雇用保険法の「1歳に満たない子」は、「1歳の誕生日の前々日までの子」を指しています。

法律上、年齢は誕生日の前日に加算されます。

(関連記事)なぜ年齢は「誕生日の前日」に加算されるのか?

「誕生日の前日は満1歳(1歳に達した子)であるため、誕生日の前々日までが1歳に満たない子である」というのが、雇用保険法における1歳に満たない子の考え方です。

育児介護休業法の「1歳に満たない」は「誕生日の前日まで」

一方、育児介護休業法では、「『1歳に満たない』とは、誕生日の前日までの意であること」との解釈が示されています。

民法第141条は、期間の満了について次のように定めています。

§民法
(期間の満了)
第141条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

「誕生日前日の24時(末日の終了)で満1歳になるため、誕生日前日の日中はまだ1歳に満たない」というのが理由のようです。

育児介護休業法も「誕生日の前々日まで」と解釈しても支障はないのでは

上記の通り、雇用保険法と育児介護休業法では、「1歳に満たない子」が指し示す範囲に誕生日の前々日が含まれるかどうかの違いがあります。

ただ、育児介護休業法第5条は「育児休業の申出をできるのは誰か」について定めたものです。

1歳までの育児休業は、誕生日の前日(=1歳に達した日)まで取得できます。

雇用保険法と同じく「誕生日の前々日まで」と解釈したとしても、「育児休業は誕生日の前日まで取得できるので、その申し出ができるのは誕生日の前々日まで」と言っているだけであり、何ら支障はありません。

個人的には、むしろ、現行の「誕生日の前日に『今日から育児休業を取る』という申し出ができる」という解釈よりも自然で、本来の立法趣旨は雇用保険法と同じく「誕生日の前々日まで」という意味だったのではないかと思ったりもします。