改正労基法で導入された「使用者による年次有給休暇の時季指定義務」のポイント

労働基準法の改正により、使用者は、年次有給休暇が10日以上付与される者に対して5日を時季指定して付与することが義務付けられます。

従来、年次有給休暇は労働者からの請求があった場合に付与することが義務付けられていましたが、法改正後は労働者からの請求の有無にかかわらず5日間を必ず取得させなければなりません。

年次有給休暇に関する取り扱いがこれまでと大きく変わることになる制度改正であり、厚生労働省は有給休暇の時季指定義務に関するリーフレットを作成して、同省のホームページで公表しています。

リーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 分かりやすい解説(2019年4月施行)」(https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf)

事業規模にかかわらず全ての会社が平成31年4月から適用

年次有給休暇の時季指定義務は、事業規模にかかわらず全ての会社を対象に平成31年4月1日から施行されます。

同時に施行される「時間外労働の罰則付き上限規制」については、中小企業は平成32年4月1日まで1年間適用が猶予されていますが、年次有給休暇の時季指定義務には猶予措置は設けられていないことに留意してください。

年10日以上の年次有給休暇を付与される労働者が対象

使用者による時季指定義務があるのは、年10日以上の有給休暇を付与されている労働者です。前年からの繰越日数は含まれず、当年度において新たに10日以上の年次有給休暇が付与された労働者のみが対象となります。

労働基準法第39条は、入社後6か月を経過した時点で10日の有給休暇を付与することが義務付けていますので、正社員(週5日以上又は週所定労働時間30時間以上)であれば必ず時季指定義務の対象となります。(出勤率が8割未満であるためその年の有給休暇を付与されなかった場合を除く。)

一方、所定労働日数によって有給休暇の比例付与が行われるパートタイマーやアルバイト(週4日以下かつ週所定労働時間30時間未満)は10日未満の有給休暇しか付与されないことがありますので、この場合は年次有給休暇を付与されていても使用者の時季指定義務の対象とはなりません。

年5日を超えて使用者が時季指定することは不可

労働者本人からの請求に基づいて付与した年次有給休暇や計画的付与制度によって付与した年次有給休暇の日数は、使用者による時季指定義務の5日間から除外されます。

当該年度の年次有給休暇の取得日数が5日に達した時点で使用者による時季指定義務がなくなると同時に、使用者から時季指定を行うこともできなくなります。

就業規則等で5日を超える年次有給休暇を使用者の時季指定の対象として定めることもできず、このような定めは無効となります。

なお、日数として5日取得させればよく、取得させる年次有給休暇が前年度からの繰越分であるか当年度に新たに付与された分であるかは問題となりません。

年次有給休暇管理簿の作成と3年間の保存義務

使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存することが義務付けられます。

年次有給休暇管理簿は、年次有給休暇の「取得時期」「取得日数」「基準日」が労働者ごとに明らかにされている必要があります。これらの必要事項が盛り込まれていれば、労働者名簿や賃金台帳などの他の書類とあわせて調製することとしても差し支えありません。

弊所で取り扱っている勤怠管理ソフトの一つである奉行シリーズの「奉行Edge 勤怠管理クラウド」(株式会社オービックビジネスコンサルタント)では、平成31年3月リリース予定のバージョンアップで下記のような年間カレンダー形式の年次有給休暇管理簿を自動作成できるようにすることで法改正に対応しています。

今回の法改正では、年次有給休暇管理簿の作成だけでなく、タイムカード等の客観的な記録による労働時間の把握も企業に義務付けられます。事務負担の軽減や業務効率の向上の観点からは、奉行勤怠管理クラウドをはじめとした勤怠管理システムの導入による対応が望ましいでしょう。

就業規則への規定

年次有給休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、就業規則には、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について記載しなければなりません。

就業規則の規定例は次の通りです。

(年次有給休暇)
第○条 1項~4項(略)

5 第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。

労働者本人からの請求や計画的付与制度によって年5日の年次有給休暇が取得される体制が整っていて、使用者による時季指定を行うことがない場合には就業規則への記載は不要と解されますが、使用者による時季指定を行う可能性があるのであれば必ず記載しておきましょう。

年次有給休暇の全部または一部を前倒しで付与している場合の取扱い

法律上、年次有給休暇は入社後6か月後とその後1年ごとに付与することが義務付けられていますが、労務管理が煩雑になる等の理由により、会社によっては全ての労働者に対して1月1日や4月1日などの同一の基準日を定めて年次有給休暇を付与している場合があります。

特に多いのが、次の3つのケースで、リーフレットではそれぞれのケースにおける取扱いについても解説しています。

  • 入社6か月後に付与される年次有給休暇を入社日に前倒しで付与している場合
  • 最初の年次有給休暇は入社6か月後に付与するが、2年目以降は全ての労働者について基準日を同一としている場合
  • 入社時に入社6か月後に付与される10日間の一部を付与し、入社6か月後に残りの日数を付与している場合

詳細はリーフレットで確認していただければと思いますが、基本的な考え方は次のような取り扱いになります。

  1. 法定の付与日数が全て前倒しで付与された場合は、前倒しで付与された日が1年の起算日となる。
  2. 前の基準日と次の基準日の間が1年未満のため期間の重複が生じた場合は、前の期間の始期から次の期間の終期までの間にその長さによって比例按分した日数の年次有給休暇を付与することが認められる。
  3. 分割付与された場合は付与日数の合計が法定の日数に達した日が1年の起算日となるが、その時点ですでに取得されている日数分は5日間から控除される。

2のケースが特に特例的な取り扱いとなっているため留意が必要です。

最新情報をチェックしよう!
広告