2016年度の最低賃金の引き上げ幅の目安は全国平均で24円に

2016年度の最低賃金の引き上げ幅の目安は全国加重平均で3%に

厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会は、7月26日に、2016年度の最低賃金(時給)の引き上げ幅の目安を、全国加重平均で3%相当の24円とすることを決定しました。

引き上げ率は安倍政権が目指している「年3%」に達しており、引き上げ幅は、比較可能な2002年度以降で最大で初めて20円を超えました。

目安通りの引き上げ幅となれば、最低賃金は時給822円となり、こちらも初めて800円を超えることになります。

実際の引き上げ幅は都道府県ごとに決定される

引き上げ幅の目安は、都道府県をその経済規模などに応じてA~Dランクの4つに分けて、そのランクごとに決定されています。

各ランクの引き上げ幅の目安は次の通りです。

Aランク 25円(東京、神奈川、千葉、愛知、大阪の5都県)

Bランク 24円(埼玉、栃木、静岡、京都、広島など11府県)

Cランク 22円(北海道、宮城、山梨、香川、福岡など14道府県)

Dランク 21円(青森、福島、島根、愛媛、沖縄など17県)

この後、都道府県ごとに設置される地方最低賃金審議会が、中央最低賃金審議会が示した目安を参考にその地域の実情を考慮した最低賃金額の審議を行い、最終的には、都道府県労働局長(または厚生労働大臣)が、地方最低賃金審議会の意見に基づいてその都道府県の最低賃金額を決定します。

ただ、最終的に決定される引き上げ額が中央最低賃金審議会の示した目安額と大きく異なることはほとんどないため、どの都道府県もランクごとの目安額程度の最低賃金の引き上げが見込まれます。

最低賃金の引き上げには副作用も

安倍政権は、2015年11月24日の経済財政諮問会議で、「最低賃金を年3%程度を目途に引き上げて全国加重平均で時給1000円を目指す」と表明しており、来年度以降も最低賃金は相当程度に引き上げられることが想定されます。

最低賃金の引き上げは経済対策として不可欠なものであり、労働者の生活水準の向上や底上げに資するものです。

しかし、最低賃金を引き上げれば現在最低賃金額で働いている全ての労働者が必ずしもその恩恵にあずかれるとは限りません。

その副作用も大きく、やり方やタイミングを誤ると逆に失業者の増加などを招きかねません。

最低賃金の引き上げは、働く機会そのものが失われるリスクをはらんでいます。

例えば、企業は、海外に拠点を移して賃金の安い現地の労働者を使用することや、業務の全自動化やシステム化によって労働者を使用しなくてもよい体制をつくることを検討することになるでしょう。

海外への拠点移転やシステム化を行うことが出来ない中小企業は、上がり続ける最低賃金によって採算が取れなくなって事業を継続することが出来なくなるおそれがあり、そうなれば、大企業への一極集中化が進むことになります。

都市部と地方の賃金格差も問題となる

都市部と地方の最低賃金の格差も問題です。あらゆる分野で地域格差の是正が叫ばれて久しいですが、最低賃金は、その性質上、地域格差の是正とは逆行して都市部と地方の差がだんだん大きくなっています。

最も最低賃金が高い東京都と最も最低賃金額低い沖縄県を比較すると、平成18年度の最低賃金は、東京都が719円、沖縄県が610円でその差は109円でしたが、平成27年度の最低賃金は、東京都が907円、沖縄県が693円でその差は214円に広がっています。

そのため、都市部への労働力のさらなる集中化を招き、地方はさらに疲弊していくおそれがあります。

金融政策と賃金上昇政策の2つがうまく機能して、好循環の中で企業収益と賃金がどちらも向上していくことを期待したいですね。