ヤマト運輸が過去2年分の未払い残業代の遡及払いへ

ヤマト運輸を傘下に持つ「ヤマトホールディングス」が、全国の配達員(ドライバー)ら約7万人を対象に未払い残業代の実態調査を行い、未払いが確認されれば残業代を支給する方針を固めたことが報じられました。

同社は、昨年8月に、男性ドライバーからの申告を受け横浜北労働基準監督署から是正勧告を受け、同ドライバーに対して約57万円の残業代未払いを認めています。

今回の実態調査では、1人あたりの支給額が100万円を超えるケースもあるとみられており、未払い残業代の総支給額は相当な金額となるのではないでしょうか。

同社によると、未払残業代の支給は、遅くとも今夏までに終える方針とのことです。

サトレストランシステムズが労働基準法違反で略式起訴

ヤマト運輸のニュースが報じられたのと同じ日に、従業員に違法な長時間労働をさせたとして、大阪労働局の過重労働撲滅対策班(かとく)から労働基準法違反で書類送検されていた「和食さと」などを全国展開する「サトレストランシステムズ」が、2月27日に大阪区検によって大阪簡易裁判所に略式起訴されたことが報じられました。

同社が異議を申し立てなければ罰金刑が確定します。罰金額は、残業代不払い(労働基準法第37条違反)と違法な長時間労働(労働基準法第32条違反)を併合して50万円になると思われます。

同社は、昨年9月のかとくの捜索を受けた後、サービス残業をしていた従業員653人に過去2年分の残業代として計約4億6200万円を支払っています。

1人当たり約70万円の残業代の遡及支払いを行っている計算です。

未払残業代だけでなく遅延損害金や付加金を請求されることも

多額の未払い残業代の遡及払いに関するニュースが相次いで報じられています。

未払い残業代の請求時効は2年間です。最近は未払い残業代の請求をうたう弁護士事務所も増加しており、経営者にとっては、未払い残業代を遡って請求されるリスクが以前より高くなったと言えます。

労働基準監督署の未払い残業代の是正勧告を行う場合、遡及払いの指導は、未払いになっている残業代のみが対象となります。

しかし、労働者が弁護士に依頼し、民事上の手続きにより未払い残業代を請求してきた場合は、債務不履行に対する遅延損害金(民法第415条)や付加金(労働基準法第114条)もあわせて請求されます。

§民法

(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

§労働基準法

(付加金の支払い)
第114条 裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から2年以内にしなければならない。

月給額が30万円の社員の場合、月平均10時間のサービス残業があれば、未払い残業代の総額は2年間で約50万円になります。

遅延損害金や付加金を請求された場合は、請求額はさらに大きくなることになります。

企業防衛やリスクマネジメントの観点から残業対策を

多くの会社にとって、未払い残業代を遡って支払わなければならなくなった場合に事業運営に与える影響は決して小さくないでしょう。最悪の場合、キャッシュフローを著しく悪化させ、事業継続そのものが困難となることもあり得ます。

企業防衛やリスクマネジメントの観点からも、同じ賃金で「いかに長時間働かせるか」ではなく「いかに効率的に働かせるか」という考え方に早急にシフトさせていく必要があるのではないでしょうか。

しのはら労働コンサルタントでは、元労働基準監督官の視点から、現在会社がどの程度の未払い残業代を請求されるリスクがあるかをチェックするサービスを行っています。

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