企画業務型裁量労働制の対象業務拡大を改正法案から削除!裁量労働制の本質的な問題点とは?

企画業務型裁量労働制の対象業務拡大を改正法案から削除!裁量労働制の本質的な問題点とは?

労働時間調査に関する不適切データに端を発し、政府が今国会の最重要法案と位置づける「働き方改革関連法案」から「企画業務型裁量労働制の対象業務拡大」が全面削除されることになりました。

不動産大手「野村不動産」(東京)が、営業職の50代男性に裁量労働制を違法に適用し、2017年12月に過労自殺として労災認定されていたことも明らかとなり、裁量労働制に対する注目が高まっています。

裁量労働制の不適切運用に関する指導は増加傾向

裁量労働制は、労働者に仕事の方法や時間の配分などの裁量を与える代わりに、実働時間にかかわらずあらかじめ定めた「みなし労働時間」だけ働いたものとみなす制度であり、大きく分けて「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

昨年から裁量労働制の不適切運用に関するニュースが相次いでいます。

2017年9月、ゲーム開発会社の「サイバード」(東京)が、広報などを担当する女性社員に専門業務型裁量労働制を違法に適用していたとして、渋谷労働基準監督署から是正勧告されたことが報じられました。

NHKは、再発防止対策として、2017年4月からそれまで導入していた「事業場外のみなし労働時間制」に代えて「専門業務型裁量労働制」を採用しましたが、2017年12月に「適切な水準のみなし労働時間を設定すること」という指導を受けたことが報じられました。

裁量労働制は、適用対象となる労働者の基準があいまいな点も多いため、拡大解釈して適用されることも少なくなく、長時間労働や残業代不払いの温床の一つにもなっています。

裁量労働制の本質は「労働者に裁量を与えること」ではない

安倍総理は、裁量労働制によって「柔軟な働き方が可能になる」として対象業務の拡大を推進していました。

ただ、裁量労働制を導入していなくても、就業規則や雇用契約書で出退勤時間の自由や仕事のやり方の裁量を与えることは可能です。

労働者に裁量を与えて柔軟な働き方を実現したいのであれば、裁量労働制にこだわることなく、労働者に裁量を与えればよいだけです。

裁量労働制の導入によって可能になるのは、実労働時間よりも短い労働時間に基づく賃金の支払い(実働10時間に対して8時間分の支払い)です。

一方、当然ですが、実労働時間よりも長い労働時間に基づく賃金の支払い(実働6時間に対して8時間分の支払い)は、裁量労働制の導入の有無に関係なく可能です。

つまり、裁量労働制の本質は、「労働者に」「裁量を与えること」ではなく、「会社に」「賃金支払い義務を免除すること」にあります。

「柔軟な働き方が可能になる」として裁量労働制の対象業務拡大を進めることには無理があるのではないでしょうか。

会社がメリットを享受できるのはみなし労働時間が短いとき

裁量労働制の導入によって会社が金銭的メリットを享受できるのは、実働時間よりも短いみなし労働時間が定められている場合(1日当たりの平均実働時間が10時間でみなし労働時間が9時間と定められている場合)です。

実働時間とみなし労働時間に大きな差がない場合(平均実働時間9時間に対してみなし労働時間が9時間と定められている場合)には、裁量労働制の導入の有無によって支払わなければならない賃金にあまり大きな差は生じません。

裁量労働制の対象業務拡大を強く望んでいる背景には、残業代負担を免れたいという意向が強く働いているであろうことは想像に難くありません。

労働者が労使協定の締結を拒否できていないことが全て

裁量労働制は、会社の意向だけで一方的に導入することはできず、労使協定の締結(専門業務型裁量労働制)や労使委員会の決議(企画業務型裁量労働制)が必要です。

裁量労働制のみなし労働時間が実働時間よりも著しく短い場合には、労働者代表が労使協定の締結を拒否すれば、いわゆる「定額働かせホーダイ」となることを回避できます。

しかし、裁量労働制についてこれだけ騒がれていても、「労働者が労使協定の締結を拒否すればいい」という話は全く出てきません。

実際、労働者代表が会社側から提示された協定の締結を拒否することができるケースはほとんどないでしょう。

会社から言われるがままに労使協定を締結せざるを得ない労働者、すなわち、労使協定の締結に裁量がない労働者が、裁量労働制によって柔軟な働き方を実現することは考えにくいのではないかと思います。

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