労働条件通知書が電子メールやSNSでも可能に!対応時の留意点やポイントは?

労働基準法第15条第1項は、労働契約の締結に際して、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないことを規定しています。

 §労働基準法

(労働条件の明示)
第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

2~3 略

従来、「厚生労働省令で定める方法」は、労基則第5条第4項において書面の交付によることとされていましたが、本条の改正により、平成31年4月1日からは電子メール等やFAXによる方法も認められることになりました。

§労働基準法施行規則

第5条第4項 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。

  1. ファクシミリを利用してする送信の方法
  2. 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)

労働者の希望の確認は口頭でも可能だが「個別」かつ「明示的」な方法が望ましい

電子メール等やFAXによって労働条件を明示することができるのは、労働者が希望した場合に限られます

「労働者が希望した場合」とは、労働者から使用者に対して口頭で希望する旨を伝達した場合を含むと解されますが、労基法第15条の趣旨が「労働条件が不明確なことによる紛争を未然に防止すること」であることに鑑みると、紛争の未然防止の観点からは、労使双方において、労働者が希望したか否かについて個別に、かつ、明示的に確認することが望ましいです(H30.12.28基発1228第15号)。

すなわち、労働者の希望を確認する方法に制限はなく、面接の際などに口頭で希望を確認した(同意を得た)としても「労働者が希望した場合」という要件は満たしますが、そもそも労基法第15条が後になって「言った」「言わない」という労使トラブルを回避するために口頭ではなく書面の交付等による労働条件の明示を義務付けていることを鑑みると、労働条件の明示方法の希望についても労使トラブルの余地が残る口頭での確認は望ましくなく、書面や電子メールなどの明示的な方法による確認が適切であると言えるでしょう。

労働条件の明示方法として認められる「電子メール等」とは?

「電子メール」は、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第2条第1号の電子メールと同じものをいいます。

§特定電子メールの送信の適正化等に関する法律

(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

  1. 電子メール 特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。)であって、総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。

§電気通信事業法

(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

  1. 電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。

§特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第2条第1号の通信方式を定める省令(平成21年総務省令第85号)

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第2条第1号の総務省令で定める通信方式は、次に掲げるものとする。

  1. その全部又は一部においてシンプルメールトランスファープロトコルが用いられる通信方式
  2. 携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式

通達(前出)では、具体例として次に掲げる方法が「電子メール等」に含まれると示されており、現在社会において日常的に利用されているコミュニケーションツールであれば特に問題はないと言えるでしょう。

  • パソコン・携帯電話端末によるEメール
  • Yahoo!メールやGmailなどのウェブメールサービス
  • RCS(プラス・メッセージ等の携帯電話同士で文字メッセージを等を送信できるサービス)
  • SMS(携帯電話同士で短い文字メッセージを電話番号宛てに送信できるサービス)
  • LINEやFacebook等のSNSメッセージ機能

ただし、RCSやSMSは、PDF等の添付ファイルを送付することができないこと、送信できる文字メッセージ数に制限等があり、また、原則である書面作成が念頭に置かれていないサービスであることから例外的な手段に位置付けられており、原則としてはEメールやSNSメッセージ機能等による送信の方法が望ましいとされています。

また、上記のサービスによっては、情報の保存期間が一定期間に限られている場合があり、労働者が内容を確認しようとした際に情報の閲覧ができない可能性があるため、労働者自身で出力による書面の作成等により情報を保存するように使用者から伝えることが望ましいです。

なお、「その受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」である必要がありますので、下記のような労働者以外の多数の者が閲覧できる方法は当然ながら不適切となります。

  • 労働者が開設しているブログやホームページ等への書き込み
  • SNSの労働者のマイページにコメントの書き込み
  • グループチャット

電子メール等の「送信」はどの時点で該当する?

使用者が電子メールを送信したにもかかわらず、労働者が受信拒否設定をしていたり電子メール等の着信音が鳴らない設定にしたりしているなどの理由によって受信したことを直ちに認識しないケースが考えられます。

この点について通達(前出)は、個々の電子メール等の着信の時点で、相手方である受信者(労働者)がそのことを認識し得ない状態であっても、受信履歴等から電子メール等の送信が行われたことを受信者が認識しうるのであれば「電子メール等の送信」に該当すると解されるとしています。

ただし、労働条件の明示の不備は労使トラブルを招くことになるため、労使トラブルの未然防止の観点からは、使用者があらかじめ労働者に対し、労働者の端末等が上記のような設定となっていないか等をあらかじめ確認した上で送信することが望ましいとの留意点も付記されているところです。

なお、上記通達では、労働者が受信したことを認識しうる状態に至った時点で「電子メール等の送信」に該当するとしていることから、機器不良等が原因で電子メール等が到達せず、労働者が受信したことを認識できない場合には、使用者が送信を行っていたとしても法律上の義務を果たしたとは認められないと考えられます。

電子メール等の記録を出力して書面を作成できることが必要

労働条件の明示の趣旨を鑑みると、使用者が労働者に対し確実に労働条件を明示するとともに、その明示された事項を労働者がいつでも確認することができるよう、当該労働者が保管することのできる方法により明示する必要があることから、労働者から書面の交付による明示以外の方法を希望した場合であっても、電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限られます(前出通達)。

「出力することにより書面を作成することができる」とは、電子メール等の本文又は添付ファイルについて紙による出力が可能であることを指します。

労使トラブルの防止や書類管理の徹底の観点からは必要事項を記載した労働条件通知書を添付して送信する等、可能な限り労使トラブルを防止し、かつ、書類の管理がしやすい方法とすることが望ましいです。

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