パート社員を正社員登用した場合の年次有給休暇の付与日数はどうなる?

働き方改革の推進や歴史的な人手不足を背景に、多くの会社で正社員登用や無期転換によって有能な人材を確保しようとする動きがみられます。

では、平成29年4月1日に週3日、1日8時間の労働条件で雇用したパート社員を、年次有給休暇の付与日(パート採用から1年6か月が経過した日)である平成31年10月1日に週5日、1日8時間の正社員に転換させた場合、何日の年次有給休暇を付与する必要があるでしょうか。

なお、全労働日の8割以上の出勤率は満たしているとします。

労働時間が短い労働者は年次有給休暇の比例付与が行われる

年次有給休暇は、雇用形態にかかわらずすべての労働者に付与する必要がありますが、通常の労働者(いわゆる正社員)よりも週所定労働日数が相当少ない労働者については、その日数に応じて通常よりも少ない日数の年次有給休暇を付与(比例付与)することが認められています。

具体的には、『週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満』の労働者の場合に比例付与の対象になります。

「かつ」要件のため、週4日勤務であっても1日の所定労働時間が8時間(週の所定労働時間が32時間)の場合は比例付与の対象にはならず、通常の日数の年次有給休暇を付与する必要があります。

雇用形態の変更があった場合は変更後の労働条件で付与日数が決まる

途中で所定労働時間の変更があった場合、比例付与の対象となるかどうかは原則として年次有給休暇が付与された時点の労働条件によって決まります。

今回のケースでは、年次有給休暇が付与される平成31年10月1日の時点で正社員であるため、比例付与ではなく通常の日数の年次有給休暇を付与することになります。

一方、年次有給休暇を与える必要があるかどうか(全労働日の8割以上出勤しているかどうか)は、付与日時点の雇用形態にかかわらず付与日以前の1年間(初年度のみ6ヶ月間)の出勤率で判定します。

したがって、今回のケースだと、

  1. 年次有給休暇を与える必要があるかどうかは、平成29年10月1日から平成30年9月30日までの出勤率(パート社員としての出勤率)
  2. 年次有給休暇を何日与える必要があるかは、平成31年10月1日時点の所定労働日数(正社員としての所定労働日数)

でそれぞれ判断することになります。