シフト制などで日によって所定労働時間が異なる社員が年次有給休暇を取得した場合、いくらの賃金を支払う必要があるのでしょうか。
有給休暇を取得した日の賃金の支払い方は3種類
社員が年次有給休暇を取得した日の賃金は、次のいずれかによって支払うこととされています。
(1)平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3)健康保険法による標準報酬日額に相当する額
これらのうち、(1)と(2)は原則的な方法です。
(3)は例外的な支払方法であり、会社と従業員代表の間で労使協定を締結することが必要となります。
あえて(3)を選ぶ必要性は低いことから、通常は(1)と(2)のどちらかの選択になるでしょう。
いずれの方法で支払うかをその都度選択するということは原則として認められず、どの方法で支払うかはあらかじめ就業規則等で明確に規定しておくことが必要です。
「(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を支払う場合
(2)によって通常の賃金を支払う場合は、年次有給休暇を取得した日の所定労働時間が8時間であれば8時間分の賃金、4時間であれば4時間分の賃金が、その日に支払われるべき賃金額となります。
最もシンプルでわかりやすい方法と言えるでしょう。
なお、就業規則等で特段の定めがない限り、所定労働時間が8時間の日であっても4時間の日であっても、年次有給休暇の取得日数は1日としてカウントされます。
「(1)平均賃金」を支払う場合
平均賃金の算出方法は、労働基準法第12条に規定されていて、原則として『直近3ヶ月の賃金総額をその計算の基礎となった期間の総日数で割った金額』になります。
平均賃金は、それだけで本が1冊できるほど多くの例外規定が設けられているため、原則の算出方法で計算できないことも多いです。
ここではとりあえず『直近の賃金支払実績から決められる』と理解しておいてください。
賃金総額には、基本給や家族手当など固定で支払われる賃金だけでなく、時間外手当や歩合給などの月によって変動する賃金も含まれます。
残業代や歩合給が多く支払われた月の直後であれば平均賃金は高くなり、閑散期で残業代があまり支払われなかった月の直後であれば平均賃金は低くなります。
そのため、年次有給休暇の賃金を平均賃金で支払う場合は、年次有給休暇を取得した時期やタイミングによって支払われる賃金額が大きく異なります。
逆に、年次有給休暇を取得した日の所定労働時間は、支払われる賃金額に影響しません。
所定労働時間が8時間の日に年次有給休暇を取得した場合よりも、所定労働時間が6時間の日に年次有給休暇を取得した場合の方が支払うべき賃金額が多いということもありえます。
年次有給休暇を取得した時にいくら支払われるか気になる方は、会社の支払い方法がどれになっているか就業規則等を確認してみましょう。