法律・制度の誤解が原因で就業規則の違反になりやすい3つのケース

法律・制度の誤解が原因で就業規則の違反になりやすい3つのケース


労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成して所轄労働基準監督署長に届け出ることを義務付けています。

平成28年に、労働基準監督署が実施した定期監督等で第89条違反を指摘された事業場数は、9,766件に上ります。

これは、第32条違反(違法な長時間労働)、第37条違反(割増賃金未払い)、第15条違反(労働条件通知書)に次いで4番目に多い違反件数であり、定期監督等が実施された事業場(13万4617件)の約14件に1件で第89条違反の指摘がされています。

法違反であることを知っていたが作成・届出を行っていないという事業場や、法律の規定を知らなかったという事業場ももちろんありますが、中には、法律や制度の勘違いによって法違反の指導を受けてしまったという事業場も少なくありません。

第89条違反の原因となりやすい法律や制度の勘違いのケースを3つご紹介します。

(1)「事業場」ごとに就業規則の作成・届出をしていない

就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場ごとに作成して、それぞれの事業場を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。

事業場とは、本社、支社、支店、営業所、工場など、原則として場所的に独立している組織単位のことを言います。ただし、本社と東京支店が同じビルの中に所在する場合など、機能的に独立していると認められる場合には、同一所在地であっても別々の事業場として取り扱われる場合があります。

複数の事業場を有する企業であれば、常時10人以上の労働者を使用しているすべての事業場においてそれぞれ就業規則の作成・届出を行う必要があります。

なお、本社と各事業場で就業規則の内容が同じである等の一定要件を満たす場合に、本社管轄の労働基準監督署に全事業場の就業規則を届け出ることができる「就業規則の本社一括届出」の制度がありますが、届出先が本社管轄の労働基準監督署に一括されるだけであり、事業場ごとに就業規則を作成しなければならないことに変わりはないことに注意してください。

(2)パートやアルバイトを「常時使用する労働者」に含めていない

事業場で使用している正社員が10人未満であることを理由に就業規則の作成・届出が行われていないケースがありますが、「常時使用する労働者」とは、その事業場において通常の業務を行っていくために雇用している労働者のことであり、パートタイマーやアルバイトなどの有期契約労働者であっても、通常業務を行うために雇用しているのであれば「常時使用する労働者」に含まれます。

そのため、正社員が10人未満であっても、パートタイマーやアルバイトなどを含めれば常時10人以上の労働者を使用しているという場合には、就業規則の作成・届出が必要になります。

一方、繁忙期等に一時的に雇用するパートタイマーやアルバイトであれば、常時使用する労働者には当たらないため、人数に含める必要はありません。

(3)労働保険の継続事業一括認可を受けていることを理由に本社以外の就業規則を届け出ていない

労働基準監督署は、労働保険(労災保険・雇用保険)の適用や労働保険料の徴収に関する事務を行っています。

労働保険の保険関係は、原則として事業場ごとに成立します。(事業場ごとに異なる労働保険番号が付与される。)

労働保険料の申告・納付は、事業場(労働保険番号)ごとに行う必要がありますが、一定の要件を満たす事業場が「労働保険継続事業一括認可」を受けた場合は、認可を受けた全ての事業場の労働保険料の申告・納付を本社で一括して行うことが出来るようになります。(本社が持つ1つの労働保険番号にまとめることができる。)

一括の効果が及ぶのはあくまで労働保険料の納付・申請の手続きに関してのみです。

しかし、労働基準法の手続きなども本社に一括されるという誤解から、本社以外の事業場で就業規則の作成・届出が行われずに法違反の指摘をされてしまうケースが実務上少なくありません。

就業規則の作成・届出に限らず、労働基準法の適用や手続きを本社に一括することができる制度はありませんのでご注意ください。

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