労働基準法の「休業手当」、労災保険の「休業(補償)給付」、健康保険の「傷病手当金」は、一定の理由で休業することになって賃金が受けられなかった日に支払われる金銭です。
これらは、所定労働時間の一部を休業してその時間の賃金のみ支払われなかった日(一部休業日)の取扱いが、それぞれ異なります。
休業1日当たりの支給額(満額)
まず、それぞれの支給額の満額にあたる、全部休業日における1日当たりの支給額を整理します。
休業手当(労働基準法)の1日当たり支給額
休業手当は、使用者の責による事由によって労働できなかった日について、使用者から労働者に対して支払うことが義務付けられている手当です。
休業手当は、休業1日につき「平均賃金の60%」が支払われます。
平均賃金は、「直近3か月間に支払われた賃金総額をその期間の暦日数で除した金額」です。
ただし、月給制の場合(賃金締切日がある場合)は、「直近の賃金締切日以前3か月の賃金総額をその賃金計算期間の暦日数で除した金額」になります。
休業(補償)給付(労災保険)の1日当たり支給額
休業(補償)給付は、業務上や通勤中のケガや病気の療養のため休業した日について、労災保険(国)から支払われる保険給付です。
休業(補償)給付は、休業1日につき「給付基礎日額の60%」が支払われます。
さらに、「休業特別支給金」として「給付基礎日額の20%」が支払われるため、労災保険からの支給額は、合計で「給付基礎日額の80%」になります。
給付基礎日額は、呼び方が変わっただけで、前出の平均賃金と全く同じものになります。
傷病手当金(健康保険)の1日当たり支給額
傷病手当金は、業務外のケガや病気で労務不能となり休業した日について、健康保険(協会けんぽや健康保険組合)から支払われる保険給付です。
傷病手当金は、休業1日につき「支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)」が支払われます。
標準報酬月額は、健康保険料の計算基礎となる金額です。 そのため、健康保険料の納付額が多いほど、傷病手当金の給付額も高くなります。
一部休業日における支給額
次に、一部休業日における支給額の比較です。
休業手当(労働基準法)の一部休業日における支給額
休業手当は、「平均賃金の60%と一部休業日に支払われた賃金の差額」が支払われます。
平均賃金が8,000円で、その日の一部勤務に対して支払われた賃金が2,000円であれば、休業手当の支払い額は、2,800円(=8,000円×60%-2,000円)になります。
休業(補償)給付(労災保険)の一部休業日における支給額
休業(補償)給付は、「給付基礎日額と一部休業日に支払われた賃金の差額の60%」が支払われます。
ただし、支払われた賃金額が、給付基礎日額の60%を超えている場合は、休業(補償)給付は支給されません。
平均賃金が8,000円で、その日の一部勤務に対して支払われた賃金が2,000円であれば、休業(補償)給付の支給額は、3,600円(=(8,000円-2,000円)×60%)になります。
休業(補償)給付が支払われるときは、休業特別支給金の20%も支払われます。
上記の例だと、休業特別支給金も含めた労災保険からの支給額は、4,800円(=(8,000円-2,000円)×80%)になります。
しかし、給付基礎日額の60%を超える賃金が支払われているため休業(補償)給付が支払われないときは、休業特別支給金も支払われません。
傷病手当金(健康保険)の一部休業日における支給額
傷病手当金は、一部休業日については、その日支払われた賃金額に関わらず、支給がされません。
なお、勤務していない日(=全部休業日)に賃金が支払われた場合は、本来支給額と賃金額の差額が傷病手当金から支払われます。
一部休業日の取扱いと混同しないように注意してください。
一部休業日における支給額と不支給となる場合の比較表
一部休業日における「休業手当」「休業(補償)給付」「傷病手当金」の支給額を整理すると、次のようになります。
「休業手当」と「休業(補償)給付」の支給額が紛らわしいので、特に注意が必要です。