労働災害で休業するときに有給休暇は使用するべき?

労災による休業期間中は、労災保険から休業(補償)給付が支給される

仕事中や通勤中にケガをしてしまい、その療養のため休業することになったとき、労災保険から、休業期間中の収入補償として「休業(補償)給付」が支給されます。

「休業(補償)給付」は、業務中のケガで休業することになった場合の給付である「休業補償給付」と、通勤途中のケガで休業することになった場合の給付である「休業給付」を、まとめて表記したものです。

休業(補償)給付は、休業4日目から1日単位で給付が行われ、休業1~3日目は給付が行われません。

労災保険から休業(補償)給付の支給がされないこの3日間のことを「待期期間」といいます。

業務上災害の場合は、事業主が待期期間中の収入補償を行う義務を負いますが、通勤災害の場合は、事業主の収入補償義務はありません。

有給休暇を使用するかどうかは労働者の自由。手取額の減少回避のため有給休暇を使用するという選択肢もありうる。

労災によって休業しなければならなくなったとき、未消化の有給休暇があるのであれば、その休業に有給休暇を使用するかどうかは労働者の自由です。

ただし、有給休暇を使用した場合は会社から賃金が支払われることになるため、その日の休業(補償)給付は支給されません。

休業(補償)給付の支給額は、有給休暇を取得したときの賃金額よりも少ないことがほとんどのため、休業(補償)給付を受給した場合は、当月の手取総額は減少することが通常です。

そのため、有給休暇の残日数によっては、収入維持のために有給休暇を使用して休むということも選択肢になり得ます。

特に、待期期間中は、事業主に義務付けられている収入補償の額が労災保険からの支給額よりも少ないため、有給休暇を使用しなかった場合との収入差はより大きくなります。

通勤災害の待期期間中にいたっては、事業主による収入補償もないため、有給休暇の使用はほとんど必須と言えます。

なお、待期期間中に有給休暇を使用して賃金が支払われたとしても、実際の労務の提供はなされていないため、休業日として待期期間に通算されます。

休業1~3日目に有給休暇を使用したとしても、その3日間で待期期間は完成し、休業4日目からは休業(補償)給付の支給が受けられます。

通勤災害による休業期間は法律で保護されていないことに注意

通勤災害による休業の場合は、休業期間の法律上の取り扱いについても考慮する必要があります。

業務上災害による休業期間の場合、労働基準法に、

  • 休業期間とその後30日間は解雇が出来ない(第19条)
  • 平均賃金は休業期間を除外して計算する(第12条)
  • 有給休暇の出勤率算定において休業期間は出勤しているものとみなされる(第39条)

など、休業する労働者が不利益を被らないようにするためのさまざまな規定が設けられています。

しかし、通勤災害による休業期間にはこういった規定は設けられておらず、法律上は、通常の欠勤とほとんど同じ取り扱いになります。

通勤災害による休業の場合は、欠勤扱いになることを回避するために有給休暇を使用して休むということも考えなければならない場合があります。