労働基準法違反の立件に向けて東京労働局が電通本社に強制捜査を実施

11月7日、東京労働局が電通本社に強制捜査を実施

11月7日、電通の女性新入社員が昨年12月に長時間労働の末に自殺して労災認定された問題を受け、東京労働局が電通本社に対して強制捜査を行いました。

労働局が強制捜査を行うこと自体は決して珍しくありませんが、全国で88人の捜査員を投入し、電通本社のみではなく、関西支社(大阪市)、中部支社(名古屋市)、京都支社(京都市)などにも一斉に強制捜査に入っているあたりは異例の対応と言えます。

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「臨検」と「強制捜査」の違いは?

電通に対しては、10月14日にも「臨検」と呼ばれる立ち入り調査が行われており、各種ニュースで報じられました。

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臨検と強制捜査は、どちらも労働基準監督官が行いますが、臨検が、法違反の確認やその是正を目的とした行政上の立ち入り調査であるのに対し、強制捜査は、労働基準監督官が「特別司法警察職員」として有する権限を行使し、会社を労働基準法違反として送検するために必要な証拠を収集することを目的に行う、いわゆる「ガサ入れ」です。

特別司法警察職員は、普段は行政職員として業務を行っていますが、法律で認められている範囲において司法捜査権限を行使することが認められている職員のことをいいます。

労働基準監督官は、特別司法警察職員として、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの法律違反に関して司法捜査を行う権限を有しています。

労働基準監督官以外にも、海上保安官、麻薬取締官、麻薬取締員などが、それぞれの職務で必要な範囲で特別司法警察職員の身分を有しています。

なお、一定の場合のみ捜査権限を有する「特別司法警察職員」に対し、通常業務として捜査権限を行使しているお巡りさん(警察官)が「一般司法警察職員」になります。

今後は関係者に対する事情聴取の実施へ

今回、電通に対して強制捜査が行われましたが、今後は、関係者に対する事情聴取なども行われ、労働基準法違反の立件に必要な証拠がそろえば、検察庁に送致(書類送検)されることになります。

今回の事件が不起訴になることはないと思いますが、起訴されたとしても、罰則は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」(法第32条違反)に過ぎません。

同条違反で懲役刑が科されることはまずありませんから、電通も罰金刑が求められることになるでしょう。

また、労働基準法違反で立件された事件のほとんどは略式で起訴されますので、今回も、略式起訴を受けた電通が即日罰金を納付し、公判に至ることなく終結する可能性は高いのではないかと思われます。

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