労働基準法第26条は、「休業手当」について定めています。
§労働基準法
(休業手当)
第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
休業手当は、会社都合で休業させた日ごとに「平均賃金の60%以上」の支払いが必要となります。
平均賃金は、労働基準法第12条に算出方法が定められおり、原則として次の計算式で算出されます。
ただし、 日給制、時間給制、出来高払制、請負制の場合には、下記の最低保障額が定められており、原則の額と比較して大きい方が平均賃金となります。
なお、「直近3カ月間に支払われた賃金総額」は、賃金の支払日ではなく締め日が基準となります。
平均賃金の計算には残業代や通勤手当も含まれる
直近3カ月間に支払われた賃金総額からは、下記の賃金が除外されます。
- 臨時に支払われた賃金(慶弔金など)
- 計算期間が3か月を超える賃金(年3回以内の賞与など)
- 法令や労働協約で定められていない現物給与
上記以外の賃金はすべて賃金総額に含まれるため、割増賃金や成果給のように毎月変動する手当も計算に含める必要があります。
そのため、繁忙期(残業代が多い時期)と閑散期(残業代が少ない時期)では休業手当として支払うべき金額に差が生じます。
また、通勤手当も賃金総額に含まれます。
最近は、公共交通機関の発達によって新幹線通勤などの長距離通勤者も見受けられますが、このような遠距離通勤者については平均賃金が高くなる可能性があります。
なお、定期代として3カ月や6カ月ごとに通勤手当を支払っている場合は、1カ月ごとに支払われたものとみなして賃金総額に含めます。
除外賃金である「計算期間が3か月を超える賃金」には当たりませんので、平均賃金の計算時には注意が必要です。
平均賃金は「通常の生活賃金」を算定する
休業手当を支払わなければならない会社からは「なぜ残業代や通勤手当も含めなければならないのか」という疑問が寄せられることも少なくありません。
平均賃金は、休業手当以外にも解雇予告手当や労災保険の休業(補償)給付などの計算基礎として用いられますが、これらはいずれも従業員の生活を保障しようとするものと言えます。
従業員は、月によって変動があるとはいえ、残業代や通勤手当も含めた収入に基づいて生活を行っているため、基本給などの固定的賃金だけで平均賃金を計算することは「従業員の生活を保障する」という趣旨からは適切ではありません。
平均賃金は、従業員の「通常の生活賃金」をありのままに算定するということがその基本原理となっているため、残業代や通勤手当も計算に含めることとされています。