割増賃金の基礎となる「1時間当たりの賃金額」の計算方法は?

労働基準法第37条は、残業や休日労働を行わせた場合の割増賃金について規定しています。

割増賃金の1時間当たりの金額は、通常賃金を時給換算した金額に、125%(時間外手当)や135%(休日手当)などの所定の割増率を乗じて算出します。

通常賃金を時給換算する際のルールを整理しておきましょう。

期間で定められている賃金は「所定労働時間」で時給換算する

日給制や月給制など、期間で定められている賃金の計算方法です。「平均所定労働時間」を用いることがポイントです。

時給で支払われている賃金

時給単価がそのまま割増賃金の基礎となります。

日給で支払われている賃金

日給額を1日の所定労働時間で除した金額を時給換算額とします。

ただし、日によって所定労働時間が異なる場合は、1週間における1日平均所定労働時間によって時給換算額を算出します。

週給で支払われている賃金

週給額を1週間の所定労働時間で除した金額を時給換算額とします。

ただし、週によって所定労働時間が異なる場合は、4週間における1週平均所定労働時間によって時給換算額を算出します。

月給で支払われている賃金

月給額を1か月の所定労働時間で除した金額を時給換算額とします。

ただし、月によって所定労働時間が異なる場合(この方が一般的でしょう。)には、1年間における1か月平均所定労働時間によって時給換算額を算出します。

休日が多くて所定労働時間が短い月は時給換算額が高くなり、休日が少なくて所定労働時間が長い月は時給換算額が低くなるということはありません。

月給額が変わらないのであれば、1年間は割増賃金の基礎となる時給換算額は同じ金額になります。

年給で支払われている賃金

年給額(年俸額)を1年の所定労働時間で除した金額を時給換算額とします。

出来高払制の賃金は「総労働時間」で時給換算する

営業成績や売上実績などに応じて支払われる、出来高払い制その他の請負制によって定められた賃金は、その賃金算定期間(=賃金締切日で区切った期間)において支払われた当該賃金の総額を当該賃金算定期間の総労働時間で除した金額を時給換算額とします。

所定労働時間ではなく、総労働時間(その月に実際に行った労働時間)を用いて時給換算額を算出します。

例えば、ある月の所定労働時間が160時間、総労働時間が200時間(所定160時間+残業40時間)であったとします。

この月に、月給制の賃金16万円が支払われた場合の時給換算額は1,000円(=160,000円÷160時間)になりますが、出来高払制の賃金が16万円支払われた場合の時給換算額は800円(=160,000円÷200時間)となります。

これは、時給換算額を賃金支払いの基礎となっている労働時間数によって算出しているためです。

月給制の賃金は、所定である160時間の労働(を行ったこと)に対して支払われていますが、出来高払制の賃金は、実際に行った200時間の労働(によって得られた成果)に対して支払われているため、上記のような計算方法になります。

2以上の賃金が支払われている場合は賃金ごとにそれぞれ算出する

基本給は日給制だが月額固定の職務手当(月給制)が支払われている場合や、基本給は月給制だが売上実績に応じた成果給(出来高払制)が支払われている場合など、時給換算額の算出方法が異なる2以上の賃金(手当)が支払われているときは、賃金ごとにそれぞれの計算方法によって時給換算額を計算します。

1時間当たりの割増賃金額に生じた円未満の端数は四捨五入しても構わない

時給換算額に割増賃金率を乗じたものが1時間当たりの割増賃金額です。

1時間当たりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる端数処理が認められています。

なお、1時間当たりの割増賃金額で端数処理を行わない場合は、1か月の割増賃金の総額に対して50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる端数処理を行います。

(計算例)月給21万、所定労働時間160時間、時間外労働35時間の場合の割増賃金額
【時給換算額の端数処理を行う場合】

時給換算額:21万円÷160時間≒1,312円(端数の50銭を切捨て)

割増賃金:1,312円×35時間=4万5,920円

【時給換算額の端数処理を行わない場合】

時給換算額:21万円÷160時間=1,312円50銭

割増賃金:1,312円50銭×35時間≒4万5,937円(端数の50銭を切捨て)