会社の倒産時に支払われる「未払賃金立替払制度」とは?

全国各地の企業情報を調査・提供している東京商工リサーチは、月次全国企業倒産状況(負債額1,000万円以上)を、毎月ホームページで公表しています。

それによると、2016年10月度は、全国で683件の企業倒産(負債額1,000万円以上)があったそうです。

これは、10月としては1990年(646件)以来、26年ぶりに700件を下回る低水準とのことですが、それでも毎日約22件の会社が倒産している計算になります。

会社が倒産したときに従業員の生活を支える「未払賃金立替払制度」

会社の倒産は、そこで勤務する従業員の生活にも多大な影響を与えることになります。

資金繰りに窮した会社が、取引先への支払いや借入金の返済を優先した結果、従業員の賃金の全部または一部が不払いとなり、そのまま倒産に至ってしまうケースも少なくありません。

未払いとなった賃金は、法律上の優先順位に従い、会社に残っている資産を整理した中から支払われる(配当される)ことになりますが、実際には、未払い賃金に充てられるだけの十分な資産が残っていないことも少なくありません。

そのため、国では、会社の倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者とその家族の生活の安定を図るセーフティーネットとして、未払い賃金の一部を立て替えて支払う「未払賃金立替払制度」を実施しています。

未払い賃金の立替払いを受けるための要件

未払賃金立替払制度では、以下の要件を満たしている場合に、未払い賃金の立替払いを受けることが出来ます。

(1)会社が1年以上事業活動を行っていたこと

事業活動を行っていた期間が1年未満の会社の場合は、未払い賃金があっても立替払いの対象にはなりません。

(2)会社が倒産したこと

未払賃金立替払制度は、会社の倒産によって退職した従業員の未払い賃金が立替払いの対象となり、それ以外の未払い賃金は立替払いの対象とはなりません。

会社の倒産は、大きく「法律上の倒産」と「事実上の倒産」の2つの場合があります。

法律上の倒産は、破産、特別清算、民事再生、会社更生など、法律の規定に基づいて会社の破産手続きや清算手続きを行う場合です。

一方、事実上の倒産は、法律上の破産手続き等は行っていないが、会社が事業活動を停止しており、再開する見込みがない場合です。

法律上の倒産手続きは、破産管財人等の選任などの費用が必要となります。そのため、中小企業の場合、事実上倒産しているにもかかわらず、破産などの法律上の倒産手続きを行わない場合があります。

この場合に未払い賃金の立替払いを行わないとすると、従業員の保護に欠けることになるため、未払賃金立替払制度では、法律上の倒産手続きを行っていない事実上倒産の場合であっても、未払い賃金の立替払いを行うことになっています。

なお、法律上の倒産の場合は、倒産手続きの中で破産管財人等が倒産の事実や未払い賃金額の証明を行い、事実上の倒産の場合は、所轄労働基準監督署長が倒産の事実や未払い賃金額の証明を行います。

(3)従業員が、倒産について裁判所への申立て等(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6か月前の日から2年の間に退職した者であること

未払賃金立替払制度は、賃金が支払われていない退職者であれば誰でも賃金の立替払いを受けられるわけではなく、会社が倒産したと認められる日の前後一定の期間中に退職した従業員のみが対象になります。

具体的には、法律上の倒産の場合は、倒産について裁判所への申立て等が行われた日の6か月前の日から2年間の間に退職した従業員が、事実上の倒産の場合は、労働基準監督署への認定申請が行われた日の6か月前の日から2年間の間に退職した従業員が、それぞれ立替払いの対象になります。

この期間から退職日が1日でも外れてしまった場合は、例え未払賃金があったとしても、立替払いが受けられる退職者にはなりません。

未払賃金立替払いの対象となる未払い賃金の範囲と立替金額

未払賃金立替払制度によって立替払いの対象となる未払い賃金は、従業員が退職した日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している定期賃金と退職金のうち、未払いとなっているものです。いわゆるボーナスは立替払の対象とはなりません。また、未払賃金の総額が2万円未満の場合も対象とはなりません。

立替払いが行われる金額は、未払い賃金の8割です。ただし、退職時の年齢に応じて88万円~296万円の範囲で上限が設けられています。

未払賃金立替払制度のお世話にならないことに越したことはありませんが、万が一に備え、このような制度があることは知っておきましょう。