「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の改正により、令和3年1月1日から、子の看護休暇及び介護休暇を時間単位で取得できるようになりました。
社員は、その年に付与された看護休暇・介護休暇(年ごとに5日または10日)の全てを時間単位で取得することができます。
また、会社は、子の看護休暇・介護休暇を分単位(15分単位や30分単位)での取得を認めることも可能です。
一方、労働基準法第39条第4項に規定されている「年次有給休暇の時間単位付与」は、時間単位で取得できるのは最大5日(労使協定で定めた日数)に限られ、社員からの希望があったとしても、年次有給休暇のすべてを時間単位で取得させることはできず、また、分単位で取得させることもできません。
同じ時間単位の付与でなぜこのような違いがあるのでしょうか。
年次有給休暇は「まとまった日数を取得すること」が望ましい
年次有給休暇の制度趣旨は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図り、ゆとりある生活の実現に資すること(=労働者の心身のリフレッシュを図ること)にあります。
制度趣旨を鑑みれば、年次有給休暇はある程度まとまった日数で取得することが望ましく、逆に短時間に分割して取得することは望ましくありません。
そのため、長らく時間単位による付与は認められていなかったのですが、時間単位付与の要望の高まりや社会的な取得率向上の必要性を受けて、平成22年4月の法改正で、労使協定を締結した場合に限り年5日まで時間単位での取得が認められるようになりました。
年次有給休暇は時間単位による付与は本来望ましいものではないため、時間単位で取得できる日数が制限され、分単位での取得も認められていません。
子の看護休暇・介護休暇は「必要な時間だけ取得できること」が望ましい
一方、子の看護休暇はが病気やケガをした場合の世話や予防接種・健康診断などを受けさせる場合に、介護休暇は入院への付き添いや手続きなどを行う場合に取得するものであり、必要な時間を分単位で取得できるようにすることは制度趣旨に反するものではありません。
むしろ、必要な時間が30分であるにもかかわらず1時間の休暇を取得しなければならないよりも、30分だけ休暇を取得して残りの30分はまた別の日に取得できるほうが無駄がなく、社員の利益に資することになります。
そのため、子の看護休暇・介護休暇については、付与日数のすべてが時間単位による取得の対象とし、さらに分単位での取得を認めても何ら問題がありません。
年次有給休暇は「まとまった日数を取得することが望ましい休暇」、子の看護休暇・介護休暇は「必要な時間だけ取得できることが望ましい休暇」であり、その違いが時間単位で取得できる日数や分単位取得の可否に表れています。