労働基準監督官が臨検監督で交付する「3つの指導文書」とは?

労働基準監督官は、労働者の労働条件や安全・健康の確保を図るため、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働基準関係法令に基づき、会社や工場などへ立ち入り調査を行う権限を有しています。

労働基準監督官が行うこの立ち入り調査を「臨検監督(臨検)」といい、臨検監督によって労働基準法などの法律違反や国が定める基準に達していない労働条件が確認された場合には、事業主に対して労働基準監督官個人の名前で指導文書を交付し、是正や改善の指示を行います。

労働基準監督が交付する指導文書の種類には、大きく分けて「是正勧告書」「指導票」「使用停止命令書」の3つがあります。

是正勧告書は法律違反が認められる場合に交付

是正勧告書は、臨検監督によって労働基準関係法令の法違反が確認された場合に、法違反状態の是正を求めて交付する指導文書です。

労働基準監督官が指導権限を有している労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などには、それぞれ法律違反に対する罰則規定(刑事罰)が設けられています。

例えば、割増賃金(残業代)の不払い(労働基準法第37条違反)であれば「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」(第119条)、賃金額が最低賃金を下回っている(最低賃金法第4条違反)場合であれば「50万円以下の罰金」(第40条)となります。

そのため、事業主が是正勧告書による指導に従わず、法違反状態が是正されない場合には、書類送検(悪質な場合は逮捕して身柄を送検)されることがあります。

ちなみに、労働基準法に規定されている最も重い罰則は、第5条(強制労働の禁止)違反に対する「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」(第117条)になります。

指導票は労働条件等が基準や指針を満たしていない場合などに交付

指導票は、事業場の労働条件等が国が定める基準や指針を満たしておらず、その改善を求める場合や、是正勧告書の内容を補完する場合などに交付する指導文書です。

法違反を特定して交付される是正勧告書とは異なり、法律違反ではない要改善事項などに対して交付される指導文書のため、指導票による指導に従わなかったとしても書類送検をされることはありません。

しかし、指導票に対する改善や報告などを行わなかった場合には、自主改善が見込めない事業場と判断されて再調査が行われる可能性があり、そこで法律違反が確認されれば改めて是正勧告書を交付されることもあります。 罰則がないからと言って安易には対応しないようにしましょう。

使用停止命令書は重大事故のおそれがある危険な機械や設備に交付

使用停止命令書は、安全装置の設置など法律で定められている安全基準を満たしておらず、労働者の死亡や障害などの重大事故につながりかねない危険な機械や設備が使用されていた場合に、労働安全衛生法第98条の規定に基づき、不安全状態の是正が確認できるまで使用を禁止するために交付する指導文書です。

§労働安全衛生法

(使用停止命令等) 第98条 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、第20条から第25条まで、第25条の2第1項、第30条の3第1項若しくは第4項、第31条第1項、第31条の2、第33条第1項又は第34条の規定に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者又は建築物貸与者に対し、作業の全部又は一部の停止、建設物等の全部又は一部の使用の停止又は変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができる。

2 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、前項の規定により命じた事項について必要な事項を労働者、請負人又は建築物の貸与を受けている者に命ずることができる。

3 労働基準監督官は、前二項の場合において、労働者に急迫した危険があるときは、これらの項の都道府県労働局長又は労働基準監督署長の権限を即時に行うことができる。

使用停止命令が解除される前にその機械や設備を使用した場合は、使用停止命令違反として罰則(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)の対象となります。

使用停止命令書が交付されると、停止命令が解除されるまで業務が出来ないことにもなりかねません。

法律をよく読み、安全装置や安全カバーなどは普段からしっかりと整備しておきましょう。