勤務間インターバル制度で始業時刻から出社時間までの賃金の支払いは必要?

繁忙月の時間外労働の上限が「100時間未満」で決着したことを受け、平成29年3月28日に開催された「第10回働き方改革実現会議」において「働き方改革実行計画」が策定されました。

実行計画の中では、長時間労働対策の一つとして、勤務間インターバル制度についても触れられています。

勤務間インターバル制度は、法律による導入義務化は行わず、助成金の支給によって企業の自主的な導入を促進することが決定していましたが、今後、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の改正を行い、事業者が、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務規定を設けることが明記されました。

始業時刻から出社時間までの賃金支払いは義務ではない

EU加盟国では、1993年に制定したEU労働時間指令によって、「24時間につき連続11時間以上の休息時間」を義務付ける勤務間インターバル制度が設けられています。

日本の勤務間インターバル制度はEU加盟国の勤務間インターバル制度をベースにしたものですが、これから日本で導入促進を図ろうとしている勤務間インターバル制度とEU加盟国で導入されている勤務間インターバル制度では、制度上の大きな違いがあります。

それは、始業時刻から実際に勤務を開始した時刻までの賃金の支払いに関してです。

勤務間インターバル制度は、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までに一定の休息時間を必ず確保しなければならない制度です。

休息時間の確保は、翌日の始業時刻までに必要な休息時間を確保できるように前日の業務を終わらせることが基本となりますが、前日の終業時刻が遅くなり、翌日の始業時刻までに必要な休息時間を確保できない場合には、翌日に出社する時間を始業時刻より遅くすることによって休息時間を確保する必要があります。

この場合、本来の始業時刻から実際に出社した時刻までは勤務を行わなくてよい時間となりますが、EU加盟国の勤務間インターバル制度では、この時間に対する賃金の支払いが義務付けられています。

一方、日本の勤務間インターバル制度は、始業時刻から実際に出社した時刻までの時間に対する賃金の支払いについては言及されておらず、助成金(勤務間インターバル職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース))の支給要件ともされていません。

したがって、始業時刻から実際に出社した時刻までの不就労時間については賃金を支払わないという制度も違法ではなく、そのような制度でも導入費用に対する助成金は受けられます。(ただし、会社都合による不就労時間として休業手当の支払いについて争う余地があるものと考えられます。)

それぞれの会社にあった勤務間インターバル制度の導入を

始業時刻から実際に出社した時刻までの賃金が支払われない勤務間インターバル制度の場合、会社には休息時間を確保できなかった場合のリスクがほとんどありませんし、社員の中には賃金を減らされてまで休息時間を確保しようとはしない人もいると思われますから、実効力の低下は避けられず、また、運用している間に形骸化しやすくなるとは言えるでしょう。

ただし、始業時刻から実際に出社した時刻までの賃金が支払われない勤務間インターバル制度が制度として必ずしも問題があるわけではなく、上手く運用できれば、休息時間を意識した働き方を促進し、業務効率化や長時間労働の低減につながると考えられます。

勤務間インターバル制度を導入する場合には、会社の状況や問題点を明確にし、それぞれに適した制度設計を行っていましょう。

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