厚生労働省は5月10日、労働基準関係法令違反で送検した企業の社名を公表したリストを作成し、同省のホームページに掲載しました。

「労働基準関係法令」とは、労働基準監督官が強制捜査や書類送検などの司法捜査権限を有し、労働者の労働条件や職場の安全衛生に関する規定が定められた法律の総称で、代表的なものに労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などがあります。

5月10日に公表された同リストには、平成28年10月1日から平成29年4月18日までに送検された334企業について、

  1. 企業名・社名
  2. 所在地
  3. 公表日
  4. 違反法条
  5. 事案概要
  6. その他参考事項(送検日など)

が都道府県別に掲載されています。

厚生労働省は、ホームページへの掲載期間は原則として公表日から1年間とし、今後、毎月リストの更新を行っていくとしています。

労働基準関係法令違反に係る公表事案(平成29年5月10日掲載分)

【参考】公表事案のホームページ掲載の基準

書類送検した企業はこれまでも公表されている

今回のリスト公表について報じているニュースの中には、「これまで公表されてこなかった」「初めて企業名が公表された」と解説しているものもあるようです。

ただ、労働基準監督署は、書類送検を行ったときにはその都度企業名や事案概要のプレスリリースを行っており、今回初めて書類送検した企業の実名を公表したわけではありません。

実際、人事・賃金・労務関連の専門紙を発行している労働新聞社の送検記事のコーナーでは、今回のリストに掲載されている事案がすでにいくつも掲載されています。

また、今回公表されたリストの表紙に「(※)各都道府県労働局が公表した際の内容を集約したもの」と記載されていることからも、すでに公表済みのものであることがわかると思います。

つまり、今回の「初公表」は、あくまで「厚生労働省HPでの公表が初めて行われた」ということにすぎません。

ただ、従来よりも書類送検されたことが世間一般に知られやすくはなりますから、企業に対する抑止力の向上などには一定の効果があると言えるでしょう。

安全管理の不備もブラック企業のイメージに直結するおそれあり

今回のリスト公表により、製造業や建設業など、労働災害が発生しやすく、日頃の安全管理が重要な業種の企業は注意が必要です。

世間的には、「書類送検された企業 = ブラック企業」というイメージが持たれやすくなっており、マスコミによっては、今回公表されたリストを「ブラック企業リスト」と報じているところもあります。

労働基準監督官によって行われる書類送検は、残業代不払いや違法な長時間労働などの労働基準法違反だけでなく、安全管理の不徹底によって労働災害が生じた場合の労働安全衛生法違反によるものも多数あり、今回公表されたリストにおいても労働安全衛生法違反による書類送検事案が半数以上を占めています。

そのため、今後は、安全管理の不備によって労働災害を発生させて書類送検されてしまった場合であっても、世間的には「ブラック企業」として広く認識されてしまうおそれがあります。

企業イメージの悪化は、取引先の信用失墜や採用活動への悪影響につながりかねません。

今回のリスト公表は「過労死等ゼロ」緊急対策の一環として行われたものですが、企業によっては、長時間労働対策よりも安全管理の徹底がこれまで以上に求められることになったと言えるのではないでしょうか。