1か月の育児休業を取得しても収入減少は意外と少ない?その理由とは?

ほとんどの会社で、育児休業期間中は無給となっています。

一定要件を満たす雇用保険の被保険者であれば育児休業給付金を受給できますが、1日当たりの支給額は、賃金日額(直近6か月間の給与総額を180で割った額)の67%(181日目からは50%)です。

月給30万円(賃金日額1万円)の場合、育児休業を1か月(30日)取得した場合の育児休業給付金は201,000円となり、育児休業を取得しなかった場合よりも99,000円の収入減となります。

「会社は育児休業の取得に理解があるけど、収入が低下すると生活ができない。」と、長期の育児休業の取得に二の足を踏んでいるという男性社員も多いのではないでしょうか。

ただ、社会保険料や所得税などを控除した後の手取額ベースでは意外と収入の減少はないかもしれません。

手取額の減少が意外と少ない3つの理由

手取額ベースでの収入減が抑えられる理由は、

  1. 社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の免除
  2. 雇用保険料の減少
  3. 税負担(所得税・住民税)の減少

の3つです。

1.社会保険料の免除

社会保険料は、

  • 育児休業期間に月末日が含まれる場合は、月末日が含まれる月の社会保険料
  • 育児休業期間に月末日が含まれない場合は、休業日数が14日以上であれば当月の社会保険料

の免除が受けられます。(他に賞与の社会保険料が免除される条件がありますが、ここでは省略します。)

2.雇用保険料の減少

雇用保険料は、賃金支給額に雇用保険料率(0.5%。令和4年10月現在。)を乗じた額です。

育児休業給付金は賃金ではないため、雇用保険料がかかりません。

無給になって賃金収入が減る分だけ、雇用保険料負担が減少します。

3.税負担(所得税・住民税)の減少

育児休業給付金は、非課税収入として取り扱われます。

賃金収入(課税収入)が減る分だけ課税所得が少なくなり、税負担が減少します。

育児休業を1か月取得した場合の手取額の試算結果

手取額は、どの程度減少するのでしょうか。

  • 月給30万円(賃金日額1万円。賞与なし。)
  • 月所定労働日数20日(1日当たりの欠勤控除額1.5万円)
  • 配偶者控除あり
  • 1日から開始してNか月後の月末日まで(「1日~月末日」×Nか月)の育児休業を取得

として試算した場合の手取額(年額)は、次の表のようになります。

育児休業を1か月取得した場合、収入は99,000円減少しますが、手取額の減少は30,235円です。

育児休業を6か月取得した場合でも、手取額の減少は182,310円(1か月当たり30,385円)にとどまっており、手取額の減少が意外と少ないことがわかります。

育児休業を月末日から開始すれば受けられる社会保険料免除が大きくなる

社会保険料は、「育児休業中に月末日が含まれる月の社会保険料」が免除されます。

「4月1日~4月30日」の育児休業を取得した場合は1か月分(4月分)の社会保険料が免除されますが、1日長くして「3月31日~4月30日」の育児休業を取得すれば、2カ月分(3月分と4月分)の社会保険料が免除されるため、手取額の減少がさらに抑えられることが期待できます。

そこで、先程の試算条件を、

  • 月末日から開始して翌日1日からNか月後の月末日まで(月末日+「1日~月末日」×Nか月)の育児休業を取得

に変更して手取額(年収)を試算すると、次の表のようになります。

育児休業期間が1日長くなったことで、欠勤日数が1日増え、収入減少額は先程よりも多くなります。

しかし、社会保険料免除額が1か月分増えるため、育児休業を1か月取得した場合の手取額の減少は1,095円、6か月取得した場合の手取額の減少は153,270円(1か月当たり25,545円)となり、1日から育児休業を開始した場合よりも手取額の減少が抑えられています。

男性社員も積極的に長期の育児休業の取得を

育児休業期間の長さ、育児休業の取得時期、残業代の支給額、通勤手当(非課税手当)の支給額、賞与の支給額、所得控除や住宅ローン減税の有無などによって計算結果は異なります。

会社によっては、育児休業期間が賞与計算から除外される(按分計算によって減額される)場合もあり、他にも手取額に影響を与える原因があることにも留意が必要です。

ただ、ほとんどの場合、上記と同様に手取額の減少は意外と小さくなると思われます。

育児休業を取得する日数や時期を工夫することで、手取額の減少を抑えられる場合も少なくありません。

手取額の減少が意外と少ないことを知っていただくことで、積極的に長期の育児休業を取得してもらいたいと思います。