経団連と連合の間で意見が分かれていたため調整が進められていた繁忙月における時間外労働の上限時間が「月100時間未満」で決着することになりました。

時間外労働規制の新制度案の概要は下記のとおりです。

  • 1年間の時間外労働の上限は720時間(月平均60時間)
  • 2~6ヶ月平均の時間外労働の上限は月80時間
  • 1ヶ月の時間外労働の上限は月100時間未満
  • 上限規制に違反した企業には罰則を科す

今後、この新制度案に基づいて労働基準法の法改正が進められることになります。

長時間労働に対して直接罰則を科すことが可能に

現在、労働基準監督署は、長時間労働を行わせている会社を書類送検する場合には、労働基準法第32条違反としての捜査を行っています。

労働基準法第32条違反となるケースはいくつかありますが、その多くは36協定で定めた限度時間を超えて残業を行わせているケースです。

同条違反は、36協定で限度時間を月30時間と定めている会社が31時間の残業を行わせた場合と限度時間を月100時間と定めている会社が101時間の残業を行わせた場合のどちらであっても成立します。

一方、月101時間の時間外労働を行わせていたとしても、36協定の限度時間が102時間であれば同条違反は成立しません。

つまり、捜査着手のきっかけが長時間労働による過労死であったとしても、法律上は、「長時間労働を行わせたこと」ではなく、「36協定の限度時間を超えていること」について追及しているのです。

長時間労働を行わせていること自体は法律違反を直接構成する要件とはならず、悪質性などを補強する事実に過ぎません。

今後、時間外労働の上限時間が法律に明記され、長時間労働に対する罰則規定が設けられれば、長時間労働を行わせたことに対する責任を直接追及することが可能となります。

この点は大きな変更であると言えるでしょう。

長時間労働の解決は会社の意識次第

最後まで労使で議論されていた「月100時間未満」という上限時間に対する是非は色々あると思います。

ただ、過労死ラインのギリギリまで合法的に働かせることが出来る上限時間は、長時間労働による健康障害を防止するために定めたものとしてはやはり長すぎると言わざるを得ないでしょう。

今回の上限時間の議論が広く報じられ「月100時間までは法違反にはならない」というお墨付きをもらったように考える人も多いのではないでしょうか。

長時間労働対策の議論は、最終的に、経団連が主張する「100時間以下」と連合が主張する「100時間未満」の攻防となりましたが、100時間以上であれば過労死になるが100時間未満であれば過労死にはならないというわけでは当然ありません。

「100時間以下」とするか「100時間未満」とするかは、長時間労働対策としての本質をとらえていない不毛な議論であると言わざるを得ず、むしろこの議論によって多くの人に「100時間は駄目だが99時間は大丈夫」という誤解を与えてしまったように思います。

また、タイムカードの不適切打刻などによって残業時間が上限時間を下回っているように見せかけているケースは、新制度案ですぐさま改善が見込まれるわけではなく、むしろこのようなケースが増加することも考えられます。

どのような制度導入や法改正が行われても、長時間労働の問題を解決できるかどうかはやはり会社の意識によるところが大きいでしょう。