労働災害の発生場所や発生日時を偽って報告することも「労災かくし」になる?

北大阪労働基準監督署は2020年12月23日、虚偽の労働者死傷病報告を提出したとして、土木工事業を営む「和建」の個人事業主(大阪府四条畷市)を労働安全衛生法第100条(報告等)違反の疑いで大阪地検に書類送検しました。

労働安全衛生規則第97条第1項は、労働者が労働災害によって死亡または4日以上休業した場合には、遅滞なく、労働者死傷病報告を届け出ることを義務付けていますが、労働災害が発生した場所と日時を偽って報告していました。

労災現場と日付を虚偽報告 土木工事業者を送検 北大阪労基署(2021.1.27 労働新聞社)

虚偽の報告も「労災かくし」として厳しい処分の対象になる

労働災害の発生を恐れて労働者死傷病報告による報告を行わない「労災かくし」に対しては、労働基準監督署は法違反の中でも特に厳しい対応をしています。

本件のように、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出した場合も「労災かくし」に当たりますが、本件のような事例は決して少なくありません。

事業主が虚偽の内容で報告を行おうとする理由は様々ですが、実務上の多くは、建設現場などで下請会社の労働者が労災事故に遭った場合には、元請会社の労災保険から給付を行わなければならないところ、下請会社が元請会社との関係悪化を恐れて(又は元請会社から指示されて)自社の労災保険から給付を行おうとしたものと考えられます。

労働者死傷病報告の届出を行わないことは、実質的に労災保険の適用を免れようとするもの(=被災者が労災保険の補償を受けられない)である一方、虚偽内容による届出は、元請会社の労災保険か下請会社の労災保険かの違いはあれど、被災者は労災保険の補償は受けられるため、事業主にとってあまり罪悪感がないのかもしれません。

また、「労災事故が発生したこと自体を隠しているわけではない」と、労災かくしには当たらないと考えてしまっている事業主もいるかもしれません。

ただ、上記の通り、虚偽内容による労働者死傷病報告の届出を行うことはれっきとした「労災かくし」であり、厳しい処分の対象となることは免れません。

労働災害が発生したときは正しい内容の労働者死傷病報告を遅滞なく届け出ることを心がけましょう。