転職で次の会社に入社するまでの社会保険はどうする?

会社を退職すると、会社で加入していた社会保険(健康保険・厚生年金)の資格を喪失します。

退職日と次の会社の入社日の間が空いて失業期間が生じる場合、失業期間中の社会保険はどうすればよいのでしょうか。

失業期間中の「健康保険」と「年金」の加入手続きについて解説します。

前の会社の健康保険証は退職日の翌日から使用できない

まずは、失業期間中の「健康保険」に関する取扱いです。

退職した会社の健康保険証は、退職日の翌日から使用できません。

退職直後は資格喪失手続が完了していないため、そのまま受診できてしまうことがありますが、資格喪失手続が完了した後に健康保険の運営者(協会けんぽや健康保険組合)から7割部分の返金請求を受けることになります。

保険証がない期間が生じてしまうため、失業期間の長さにかかわらず、健康保険への加入手続きが必要となりますが、失業期間が短くても保険料は1か月分(月をまたぐ場合は2か月分~)が発生します。

現実問題としては、失業期間が短期間であって、健康保険証を使う機会がなかった場合に、健康保険の加入手続きを行わないまま次の会社に入社することになったとしても支障が生じません(年金のように未納期間による不利益がない)。

しかし、原則としては、失業期間中における健康保険証の使用予定の有無に関わらず、健康保険の加入手続きをすることが必要です。

失業期間中の健康保険は大きく3つのパターンがある

失業期間中の健康保険は、主に次の3つのパターンがあります。

(1)配偶者や親などの被扶養者になる

配偶者や親などの一定の家族が会社で健康保険に加入しており、かつ、失業期間中の収入見込額が月額10万8333円未満の場合は、当該家族が加入している健康保険の被扶養者になることが出来ます。

被扶養者になる場合は、家族が勤務している会社で「被扶養者異動届」の届出をしてもらいます。

自分で健康保険料を納める必要がないため、失業期間中の健康保険として最も有利な方法です。

なお、収入見込額には、雇用保険の失業等給付(基本手当)も含まれます。

失業等給付(基本手当)の支給額が多い場合は、受給期間中は被扶養者になることが出来ません。

(2)退職した会社の任意継続被保険者になる

退職した会社で継続して2カ月以上健康保険に加入していた場合は、「任意継続被保険者」として、最大で2年間、退職した会社の健康保険に加入することが出来ます。

保険料は、退職時の標準報酬月額を基準に算出します。

会社による半額負担がなく、保険料全額を自分で負担する必要があるため、単純に計算すれば退職後の保険料負担は在職時の2倍です。

ただし、標準報酬月額には上限額が設けられていて、退職時の標準報酬月額が上限額を上回っている場合は上限額に基づいて保険料が計算されます。

そのため、退職時の標準報酬月額が上限額の2倍以上であれば、在職中よりも保険料負担額が少なくなります。

任意継続被保険者への加入手続きは、退職日の翌日から20日以内に行う必要があります。

1日でも遅れると加入が認められなくなるため注意してください。

(3)市区町村の国民健康保険に加入する

お住まいの市区町村で国民健康保険に加入する方法です。

(2)の任意継続被保険者になることが出来る場合は、任意継続被保険者となるか国民健康保険に加入するかを選択できます。

基本的にどちらを選択しても給付内容に違いはありません。

そのため、特段の理由がなければ保険料負担額が低い方を選択すればよいでしょう。

国民健康保険の保険料は、前年所得や扶養者数などによって計算されます。

計算方法や保険料率は市区町村ごとに異なるため、お住まいの市区町村の担当窓口で保険料見込額を確認し、任意継続被保険者の保険料と比較してください。

「月末退職で翌月入社」「退職日と入社日が同月内」は年金未加入期間が生じない

次に、失業期間中の「年金」に関する取扱いです。

年金加入期間は、月単位で加入期間を判定します。

下記の2つのいずれかに該当する場合は、前後の会社で厚生年金への加入期間が途切れません。

  1. 月末日に退職してその翌月中に次の会社に入社する場合(例:3月31日に退職して4月15日に入社する場合)
  2. 退職日と次の会社の入社日が同一月内の場合(例:4月5日に退職して4月15日に入社する場合)

上記の例ではいずれも、3月分までは転職前の会社の厚生年金に加入し、4月分からは転職後の会社の厚生年金に加入します。

未加入期間が生じないため、失業期間中の年金加入手続きは必要ありません。

「月末日以外に退職」は退職月が年金未加入月になる

上記の2つ以外の場合は、失業期間中に年金未加入期間が生じるため、年金加入手続きが必要です。

特に気を付けたいのが「月末日以外に退職してその翌月に入社する場合」です。

月末日以外に退職した場合、退職した会社での厚生年金加入期間は「退職月の前月まで」です。

例えば、「3月30日に退職して4月1日に入社する場合」は、失業期間が3月31日のたった1日しかありません。

しかし、退職する会社での厚生年金加入期間は2月分までであり、転職後の会社で厚生年金に加入するのは4月分からのため、3月分について年金の加入手続きが必要となります。

年金未加入期間が生じる場合は国民年金に加入する

年金未加入期間が生じた場合は、国民年金に加入することになります。

国民年金の加入は、次の2つの方法があります。

(1)配偶者の被扶養者として「第3号被保険者」になる

健康保険の(1)と同じ方法です。

ただし、こちらは配偶者に限られます。

配偶者が会社で厚生年金に加入しており、かつ、失業期間中の収入見込額が月額10万8333円未満の場合は、配偶者の被扶養者として国民年金の「第3号被保険者」になることが出来ます。

第3号被保険者になる場合は、配偶者が勤務している会社で「被扶養者異動届(第3号被保険者関係届)」を提出してもらいます。

自分で国民年金保険料を納める必要がないため、次の(2)よりも有利な方法と言えます。

(2)市区町村で国民年金に加入して「第1号被保険者」になる

お住まいの市区町村で、国民年金の「第1号被保険者」への加入手続きを行います。

こちらは、1か月あたり16,590円(令和4年度の金額)の保険料納付が必要となりますが、失業後の収入状況等によっては、保険料の全部又は一部の免除を受けられる場合があります。

保険料負担が困難な場合は、未納期間として放置することなく、必ず市区町村の窓口に相談してみましょう。