国民年金保険料の滞納で口座預金2130万円が差押え。なぜ2000万円超もの差押えがされた?

ある漫画家さんが、年金保険料の未納で約2130万円を差し押さえられたことをTwitterに投稿し、話題になりました。

国民年金保険料の未納に対する差押えと思われますが、国民健康保険料を月額1万6500円、延滞金を年14.6%で計算した場合に滞納額(=未納額+延滞金)が2130万円になる未納期間は約32年です。

実際には、全期間について延滞金を14.6%で計算されるわけではないため、さらに長い未納期間が必要です。

プロフィール等を拝見する限りでは、2000万円を超えるような滞納額になることはあり得ないと考えられますが、なぜ2000万円を超える差押えがされたのでしょうか。

差押えは原則として債権全額に対して行われる

国民年金法第95条は、国民年金保険料を国税徴収の例によって徴収すると定めており、国民年金保険料も国税徴収法に従って徴収されます。

§国民年金法

(徴収)
第95条 保険料その他この法律(第10章を除く。以下この章から第8章までにおいて同じ。)の規定による徴収金は、この法律に別段の規定があるものを除くほか、国税徴収の例によつて徴収する。

国税徴収法63条は、差し押さえる債権の範囲について次のように定めています。

§国税徴収法

(差し押える債権の範囲)
第63条 徴収職員は、債権を差し押えるときは、その全額を差し押えなければならない。ただし、その全額を差し押える必要がないと認めるときは、その一部を差し押えることができる。

本条により、差押えは原則としてその全額に対して行われます。

2130万円の滞納額があったのではなく、債権全額(つまり口座残高全額)を差し押さえた結果である可能性が高いでしょう。

延滞金は複利ではなく単利で計算する

「延滞金が複利で増えたのではないか」との意見も見られましたが、延滞金は複利ではなく単利で計算します。

そのため、いわゆる「雪だるま式」に延滞金が増加するということはありません。

世帯主や配偶者は家族の国民年金保険料未納について差し押さえられる可能性がある

では、国民年金保険料の滞納額が2000万円を超えるような金額になることはないのでしょうか。

国民年金法第88条は、保険料納付義務者について次のように定めています。

§国民年金法

(保険料の納付義務)
第88条 被保険者は、保険料を納付しなければならない。

2 世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。

3 配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う。

世帯主や配偶者は、家族の国民年金保険料を連帯して納付する義務があり、家族の未納分についても差押えを受ける可能性があります。

連帯責任のため、家族が納付しなかった場合に納付義務を負うのではなく、最初から家族と同等の納付義務を負っています。

2人分や3人分になれば、保険料自体の未納額が上がり、延滞金もその分高くなります。

そうなると短期間で滞納額が膨れ上がり、2000万円を超える滞納額になることもあると考えられます。

ただ、家族分含めて3人分の未納(月額4万9500円)があったとしても、全期間の延滞金を年14.6%で計算して滞納額が2130万円になるには、約16年の未納期間が必要となります。

現実問題としては、国民健康保険料の滞納額が2000万円を超えるような金額になることは考えにくいでしょう。

延滞金は無駄な支出以外の何物でもない

延滞金を納めたとしても将来の年金支給額が増加するわけではありません。

所得税や住民税の計算における社会保険料控除の対象ともならず、無駄な支出以外の何物でもありません。

納付期限までにきちんと納めるか、納付が難しい場合は免除申請を行うようにしましょう。