第1子の育児休業給付金と第2子の出産手当金は併給が可能。その理由は?

健康保険と雇用保険に加入している社員の場合、産前産後休業中は「出産手当金」(健康保険)が、育児休業中は「育児休業給付金」(雇用保険)が、それぞれ支給されます。(育児休業給付金は一定以上の被保険者期間があることが必要です。)

第1子の育児休業期間中に第2子が生まれることになった場合、

  • 産前期間(6週間または14週間)は、育児休業給付金と出産手当金の両方が支給される(満額支給)
  • 産後期間(8週間)は、出産手当金のみが支給される

という取扱いになり、産前期間は、育児休業給付金と出産手当の併給を受けることが可能です。

なぜ産前だけ育児休業給付金と出産手当金を併給することができるのでしょうか。

第2子の産前産後休業期間が始まった場合は第1子の育児休業期間が終了する

雇用保険法施行規則第101条の11第1項は、育児休業給付金が支給される期間について次のように規定しています。

§雇用保険法施行規則

(法第61条の4第1項の休業)
第101条の11第1項 育児休業給付金は、被保険者が、次の各号のいずれにも該当する休業をした場合に、支給する。

((1)~(2) 略)

(3)次のいずれかに該当することとなつた日後の休業でないこと。

(イ~ロ 略)

(ハ)休業終了予定日とされた日までに、育児休業の申出をした被保険者について産前産後休業期間、又は新たな育児休業期間が始まつたこと(特別の事情が生じたときを除く。)。

本条により、第1子の育児休業期間中であっても、第2子の産前産後休業が始まった場合は、以降の育児休業給付金が支給されません。

「産前休業」の取得は請求があった場合に限られるが「産後休業」は必ず取得させなければならない

産前産後休業は、労基法第65条で次のように規定されています。

§労働基準法

(産前産後)
第65条 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

2 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

3 略

産前休業が「請求した場合」が要件とされているのに対し、産後休業は請求が要件とされていません。

産前は、社員が請求しなければ「産前産後休業が始まった場合」に該当しないため、育児休業給付金の受給期間が終了しません。

一方、産後は、社員が請求しなくても「産前産後休業が始まった場合」に該当するため、育児休業給付金の受給期間が終了します。

出産手当金が支給されるのは「産前産後休業を取得した期間」ではなく「労務に服していない期間」

次に、健康保険法第102条では、出産手当金の支給要件を次のように規定しています。

§健康保険法

(出産手当金)
第102条 被保険者が出産したときは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前42日(多胎妊娠の場合においては、98日)から出産の日後56日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する。

出産手当金は、産前産後期間(産前42日(6週間)+産後56日(8週間))の間で「労務に服さなかった期間」について支給するとされています。

「産前産後休業を取得した期間」ではなく、「産前産後に労務に服さなかった期間」が支給要件です。

産前期間中に労務に服さなかった理由が第2子の産前休業でなかったとしても(第1子の育児休業であったとしても)、出産手当金の支給要件を満たします。

そのため、産前期間は、育児休業給付金の支給要件(育児休業期間中で、産前休業が始まっていない)と出産手当金の支給要件(産前期間中で労務に服していない)をどちらも満たします。

併給調整の規定も設けられてないため、育児休業給付金と出産手当金の両方が全額併給されます。

一方、産後期間は、第2子の産後休業の開始によって育児休業給付金の受給要件を満たすことができません。

産後期間は、第2子の出産手当金のみ受給することができます。