過労死の予防に労災保険の「二次健康診断等給付」を活用しよう!

労災保険は、労働者を使用するすべての会社(使用者)に加入が義務付けられている国の公的保険の一つです。

労災保険は、主に、労働者が、業務や通勤に起因して負傷、病気、障害または死亡したときに、治療費などの保険給付を行うものですが、労働者がケガや病気を負ったとき以外に支給される保険給付も存在します。

それが、脳梗塞や脳卒中などの脳疾患や、心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患を早期発見し、突然死を予防するために給付される「二次健康診断等給付」です。

「二次健康診断」と「特定保健指導」が無料で受けられる

「二次健康診断等」とは、「二次健康診断」と「特定保健指導」の2つをまとめて呼んだものであり、二次健康診断等給付を受けた労働者は、この2つを無料で受診することができます。

二次健康診断

「二次健康診断」は、次の検査項目を受診することが出来る健康診断です。

  • 空腹時血中脂質検査
  • 空腹時血糖値検査
  • ヘモグロビンA1c検査
  • 負荷心電図検査または心エコー検査
  • 頸部エコー検査
  • 微量アルブミン尿検査

二次健康診断では、脳血管と心臓の状態を正確に把握するために必要なこれらの検査を実施し、脳・心臓疾患の症状を有していないかを判断します。

特定保健指導

「特定保健指導」は、医師や保健師から、面接によって、

  • 適切なカロリー摂取や食生活に関する指導を行う「栄養指導
  • 必要な運動量や運動習慣に関する指導を行う「運動指導
  • 飲酒、喫煙、睡眠などの生活習慣に関する指導を行う「生活指導

を受けることができます。

脳・心臓疾患は、生活習慣がその発症や進行に大きく関係していることが知られています。

特定保健指導では、専門家による生活習慣改善のアドバイスを受けることで、その予防や改善を図ります。

定期健康診断で脳・心臓疾患が疑われる労働者が対象

二次健康診断等給付は、希望すればだれでも受けられるわけではなく、次の3つの要件すべてに該当する労働者が受けることができます。

(1)一次健康診断において、「血圧検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「腹囲検査(またはBMI測定)の4つすべての検査項目について異常の所見があると診断されていること

「一次健康診断」とは、会社で受診している定期健康診断のことです。

定期健康診断で、脳や心臓の疾患が疑われる4つの検査項目すべてで異常所見があった場合に、より詳細な検査である二次健康診断を実施し、脳・心臓疾患の症状を有していないかを判断します。

(2)既に脳や心臓疾患の症状を有すると診断されていないこと

二次健康診断等給付は、脳・心臓疾患が疑われる労働者に対して、その早期発見や予防を目的に行われます。

そのため、既に脳・心臓疾患を有している労働者は給付対象になりません。

(3)労災保険の特別加入者ではないこと

労災保険に特別加入している中小企業の役員や一人親方は、健康診断の受診は自主性に任されているため、二次健康診断等給付の対象になりません。

二次健康診断等給付は所定の請求書を病院に提出することで受けられる

二次健康診断等給付の対象となる労働者は、「二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)」に必要事項を記載し、定期健康診断の結果とともに病院に提出することで無料で受診することが出来ます。

定期健康診断の結果が通知された時は、4項目の所見を確認し、二次健康診断等給付の対象となるようであれば会社に請求書の作成を依頼するようにしましょう。

なお、会社によっては、定期健康診断結果が通知される時に、二次健康診断等給付が受けられることをあわせて通知してもらえるところもあります。

定期健康診断の4項目のすべてで異常所見がある場合、すでに危険な状態である可能性もあります。

自己負担なしで利用できる二次健康診断等給付を上手に活用し、脳・心臓疾患の早期発見や予防に努めましょう。