健康保険や厚生年金保険の保険料は、社員や役員の標準報酬月額に保険料率を乗じた金額です。
厚生年金保険の場合、平成28年10月現在の厚生年金保険料率は18.182%ですので、標準報酬月額が28万円の社員であれば厚生年金保険料は5万909円60銭(=28万円×18.182%)になります。
厚生年金保険の被保険者がこの社員1名のみだった場合、これが会社から国に納付する厚生年金保険料額となりますが、端数の60銭はどのように処理されるのでしょうか。
健康保険料や厚生年金保険料の納付額は1円未満の端数を切り捨てる
社会保険料負担額の端数処理は、「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」の規定に基づいて行われます。
§国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律
(国等の債権又は債務の金額の端数計算)
第2条 国及び公庫等の債権で金銭の給付を目的とするもの(以下「債権」という。)又は国及び公庫等の債務で金銭の給付を目的とするもの(以下「債務」という。)の確定金額に一円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てるものとする。
社会保険料は、「国が会社に対して有する債権」にあたるため、厚生年金保険料も本条の規定に従って1円未満の端数が切り捨てられます。
その結果、今回の場合では端数の60銭が切り捨てられ、会社が納付しなければならない厚生年金保険料は、5万909円になります。
社員が2名以上いる場合は合計してから1円未満の端数を切り捨てる
では、標準報酬月額が28万円の社員が2名いる場合の端数処理はどうなるのでしょうか。
この場合は、各社員の厚生年金保険料は端数処理を行うことなく合計し、その合計金額に対して端数処理を行います。
標準報酬月額が28万円の社員が2名いる場合であれば、厚生年金保険料の合計額は、 5万909円60銭 × 2人 = 10万1819円20銭 となり、ここから1円未満の端数(20銭)を切り捨てた10万1819円が納付額になります。
各社員の保険料を端数処理することなく(切り捨てることなく)合計することに注意してください。
会社と本人の折半額の端数処理は、本人負担額の50銭以下を切捨て、51銭以上を切上げる
次は、会社と本人の負担額を計算する際の端数処理の方法です。
厚生年金保険料は、会社と本人で折半してその半分ずつを負担しますので、先程の標準報酬月額が28万円の社員であれば、2万5454円80銭(=5万909円60銭÷2)が会社と本人がそれぞれ負担すべき金額になります。
しかし、会社と社員の両方から端数を切り捨てて2万544円にしてしまうと、保険料額の合計が5万908円(=2万544円×2)となって納付すべき5万909円よりも1円不足してしまい、逆に両方から端数を切り上げて2万545円にしてしまうと、保険料額の合計が5万910円(=2万545円×2)となって納付すべき5万909円よりも1円多くなってしまいます。
そこで、会社と本人の負担額の計算においては、「本人の負担額に50銭以下の端数がある場合は切捨て、51銭以上の端数がある場合は切上げ」を行って本人負担額とし、納付額と本人負担額の差額を会社負担額として計算します。
そのため、今回の例では、本人の負担額は端数の80銭が切り上げられて2万545円となり、納付額(5万909円)との差額である2万544円が会社の負担額になります。
なお、労使間で切上げ、四捨五入、切捨てなどの処理方法を特約で定めている場合は、上記に関わらず特約に基づいた処理が可能です。
社会保険料は、「納付額→本人負担額→会社負担額」の順番で計算する
以上を整理すると、毎月の厚生年金保険料の計算は、下記の順番で行うことで、正しい納付額、本人負担額および会社負担額を計算することができます。
(1)納付額を計算する
全ての社員(被保険者)の厚生年金保険料を端数処理を行うことなく合計し、その合計額の端数を切り捨てて納付額とする。
(2)各社員の本人負担額を計算する
社員ごとに厚生年金保険料の半分の額を算出し、その額の端数を「50銭以下切捨て51銭以上切上げ」したものをその社員の負担額とする。
(3)会社負担額を計算する
(2)で算出した本人負担額を全ての社員について合計し、その合計金額と(1)で算出した納付額との差額を会社負担額とする。
今回は厚生年金保険料を例に説明していますが、健康保険料も考え方は同じになります。
なお、健康保険と厚生年金保険の通算は行いません。
健康保険と厚生年金のそれぞれで上記の計算を行ってください。