平成29年1月1日から改正育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が施行され、介護をしながら働く方や、有期契約労働者の方が介護休業・育児休業を取得しやすくなりました。
今回の法改正のポイントを整理してみましょう。
介護を行う従業員に関する改正
(1)介護休業の分割取得が可能に
介護休業は、介護を必要とする家族(対象家族)1人につき通算93日までを原則1回に限り取得可能でしたが、改正により、3回を上限として分割して取得することが可能になりました。
これまでは、入所施設やデイサービスなどの介護サービスを探すために30日だけ介護休業を取得した場合であっても、同じ対象家族について再度介護休業を取得することは出来ませんでした。
そのため、入所施設が合わなかった場合などは、再度介護休業を利用して他の入所施設等を探すことは出来ませんでしたが、改正後は、残りの63日間を利用して他の入所施設を探すことが出来るようになりました。
(2)介護休暇の半日単位での取得が可能に
要介護状態の対象家族を介護するため、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得することが出来る介護休暇は、これまで1日単位での取得でしたが、改正により、半日単位で取得できるようになりました。
病院や入所施設への送り迎えなど丸1日休暇を取得する必要がない場合であっても、介護休暇を有効的に活用できると考えられます。
(3)「所定労働時間の短縮措置等」が介護休業とは別に取得可能に
事業主は、介護を行う従業員に対し、
- 短時間勤務の制度(1日の所定労働時間を短縮する制度、等)
- フレックスタイムの制度
- 始業または就業の時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度(時差出勤制度)
- 労働者が利用する介護サービスの費用を助成する制度その他これに準ずる制度
のいずれかの措置(選択的措置)を講じる必要があります。
これまで、選択的措置は、介護休業と通算して93日の範囲内でしか利用できませんでしたが、改正により、介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上利用できるようになりました。
(4)介護のための残業の免除が受けられるように
育児を行う従業員のみに認められていた所定外労働(残業)の免除の請求が、介護を行う従業員も行うことが出来るようになりました。
ただし、育児を行う従業員と同様、事業の正常な運営を妨げる場合には、事業主は従業員からの請求を拒否することが出来ます。
育児を行う従業員に関する改正
有期契約労働者による育児休業の取得要件が緩和
有期契約労働者が育児休業を取得できる要件が、
- 申出時点で過去1年以上継続して雇用されていること
- 子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと
に緩和されました。
(5)子の看護休暇の半日単位での取得が可能に
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員が1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得することができる看護休暇が、介護休暇と同じく、半日単位での取得が可能になり、より有効的に利用できるようになりました。
(6)育児休業等の対象となる子の範囲が拡大
育児の対象となる子は、法律上の親子関係がある実子・養子に限られていましたが、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子も対象とされました。
特別養子縁組は、6歳未満の子を、実親との親子関係を終了させて、養親の実子として受け入れる制度です。
特別養子縁組を行う場合は、正式に養子縁組を行う前に、養親と養子となる子が同居して様子を見る監護期間が設けられています。
監護期間中は、まだ法律上の親子関係が発生しておらず、これまでは育児休業などの対象となる子から除外されていましたが、実質的にはすでに育児を行っている期間であることから、今回の法改正で育児休業などの対象となる子とされました。
ハラスメントに関する改正
(7)上司や同僚による嫌がらせ防止措置の義務付け
これまで、事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取り扱いが禁止とされてましたが、それに加え、事業主に、上司や同僚による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする嫌がらせを防止する措置を講じることが義務付けられました。
上司や同僚による嫌がらせに対する事業主の使用者責任がより明確にされたと言えます。
法改正に伴う就業規則の変更・届出を忘れずに
今回の法改正により、多くの会社で就業規則(育児・介護休業等規定)の変更・届出が必要になります。
育児・介護休業法は、事業主が最低限行わなければならない基準を定めたものであり、会社にあった独自の育児・介護休業等の制度を構築することが求められます。
育児や介護を行う従業員が働きやすい職場づくりを進めることで、離職率の低下や優秀な人材の確保にもつながりますので、積極的に取り組んでいきましょう。