「金銭債務の不履行に対して請求できる「遅延損害金」の特徴」と「遅延損害金を計算する際の法定利率はどれを使用する?」で、遅延損害金に関する記事を掲載しましたが、今回のテーマは、「遅延損害金の起算日について」です。
遅延損害金の起算日は民法第412条の規定による
遅延損害金を請求するとき、その起算日はいつからになるのでしょうか。
遅延損害金の起算日は、民法第412条の、債務の履行期と履行遅滞に関する規定に従うことになります。
§民法
(履行期と履行遅滞)
第412条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
ここでは、
- 期限の定めがある債務の不履行に対する遅延損害金
- 期限の定めがない債務の不履行に対する遅延損害金
- 不法行為に基づく損害賠償に対する遅延損害金
の3つに分けて、遅延損害金の起算日を検討します。
期限の定めがある債務不履行に対する遅延損害金の起算日は「期限の翌日」
期限の定めがある債務の不履行に対する遅延損害金は、「期限の翌日」が起算日となります。
遅延損害金の起算日としては一番わかりやすいケースと言えるでしょう。
賃金の支払いは、期限の定めがある債務の代表例です。
賃金支払日に賃金が支払われなかった場合は、賃金支払日の翌日から遅延損害金を請求することができます。
なお、毎月賃金が支払われていない場合は、支払われなかった賃金ごとに、それぞれの賃金支払日の翌日から遅延損害金を計算します。
期限の定めがない債務不履行に対する遅延損害金の起算日は「債務の履行を請求した日の翌日」
期限の定めがない債務の不履行に対する遅延損害金は、「債務の履行を請求した日の翌日」が起算日となります。
例えば、事業主が労働契約法第5条に基づいて従業員に対して負っている安全配慮義務は、「いつまでに果たさなければならない」という性質の債務ではないため、期限の定めのない債務といえます。
したがって、安全配慮義務の不履行を理由に治療費や慰謝料などの損害賠償を請求するときに、その支払いが履行されるまでの遅延損害金をあわせて請求した場合の遅延損害金の起算日は、「損害賠償を請求した日の翌日」になります。
不法行為に基づく損害賠償に対する遅延損害金の起算日は「不法行為があった日」
不当解雇などの不法行為に基づく損害賠償を請求するときも、債務不履行による損害賠償を請求するときと同じく、その支払いが履行されるまでの遅延損害金をあわせて請求するのが一般的です。
不法行為に基づく損害賠償については、判例で 「不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。」 とされています。
そのため、不法行為による損害賠償の遅延損害金は「不法行為があった日」が起算日となります。
不法行為があった日の翌日ではありませんので注意しましょう。
(関連記事:金銭債務の不履行に対して請求できる「遅延損害金」の特徴)
(関連記事:遅延損害金を計算する際の法定利率はどれを使用する?)