社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)の保険料は、会社と社員が半分ずつを負担しています。
社会保険料の納付義務は会社が負っています。 会社は、毎月、社員の給与から本人負担分を控除し、会社負担分とあわせて国に納付しますが、社員が退職する際には、本人負担分の取り過ぎや不足が生じないよう注意が必要です。
社員が退職する際における給与からの社会保険料控除の方法を整理しておきましょう。
退職社員の社会保険料控除における2つのポイント
退職社員の社会保険料控除を正しく行うために確認するべきポイントは次の2つです。
- 毎月の給与から控除している社会保険料は「前月分」と「当月分」のどちらか
- 退職日は「月末」か「月末以外」か
1.毎月の給与から控除している社会保険料は「前月分」と「当月分」のどちらか
法律上、給与からの本人負担額の控除は、前月分の社会保険料について行うこととなっています。
例えば、3月中に支払う給与からは、2月分の社会保険料を控除します。
本来、これが正しい本人負担額の控除の仕方です。
しかし、会社によっては、3月中に支払う給与から3月分の社会保険料の本人負担額を控除している、つまり、当月分の社会保険料を控除している場合があります。
この場合、本来の取り扱いよりも本人負担額を1ヶ月先取りしていることになりますので、退職時には調整が必要です。
2.退職日は「月末」か「月末以外」か
社会保険の加入期間は月単位でカウントされ、月末が退職日であればその月まで、月末以外が退職日であればその月の前月までが加入期間となります。
例えば、3月31日に退職した社員は、3月までその会社の社会保険に加入することになりますが、3月30日に退職した社員は、会社での社会保険の加入は2月までとなります。
同じ月の退職であっても、退職日が月末かどうかで会社での社会保険の加入期間が1ヶ月異なってきますので、退職社員の社会保険料を控除する場合には考慮しておかなければなりません。
ケース別に見る退職社員の正しい社会保険料控除の方法
2つのポイントを基に、退職社員の正しい社会保険料控除の方法をケース別に整理してみましょう。
ここでは、退職日が3月31日(月末)の場合と、3月30日(月末以外)の場合で考えてみます。
【ケース1】前月分を控除、3月31日(月末)が退職日の場合
3月分まで会社の社会保険に加入することになり、3月分の社会保険料を4月に支給する給与から控除することで、社会保険料の控除が終了します。
ただし、月末に退職した場合は、退職月の前月(=2月)と退職月(=3月)の2か月分の保険料を退職月の給与から控除することができるという特例が認められています。
そのため、特例に基づいて3月分の社会保険料を3月に支給する給与から控除しても構いません。
その場合、3月に支給する給与からは、2月分と3月分の2ヶ月分の社会保険料を控除することになります。
【ケース2】前月分を控除、3月30日(月末以外)が退職日の場合
2月分まで会社の社会保険に加入することになり、2月分の社会保険料を3月に支給する給与から控除することで、社会保険料の控除が終了します。
給与の締め日と支払日の関係によっては4月に最後の給与を支払うことになりますが、この給与から社会保険料の控除を行うと過徴収となってしまいますので注意してください。
【ケース3】当月分を控除、3月31日(月末)が退職日の場合
3月分まで会社の社会保険に加入することになり、3月分の社会保険料を3月に支給する給与から控除することで、社会保険料の控除が終了します。
法律の規定よりも1ヶ月先取りしていますので、【ケース1】の場合のように2ヶ月分をまとめて控除するということはありません。
また、【ケース2】の場合と同様、給与の締め日と支払日の関係で4月に最後の給与を支払う場合に、この給与から社会保険料の控除を行うと過徴収となってしまいますので注意しましょう。
【ケース4】当月分を控除、3月30日(月末以外)が退職日の場合
2月分まで会社の社会保険に加入することになり、2月分の社会保険料を2月に支給する給与から控除することで、社会保険料の控除が終了します。
3月に支給する給与からすでに社会保険料の控除対象外となり、過徴収が最も発生しやすいケースと言えます。
雇用保険料の控除の取り扱いは社会保険料と異なる
ここまで、社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)の本人負担額の給与からの控除について述べてきました。
社会保険料と同じく給与から本人負担額が控除されるものに雇用保険料があります。
雇用保険料は、社会保険料の控除とは異なり、給与が支給されるたびにその支給額に基づく保険料額が控除することとなっています。
そのため、【ケース4】のように、3月に支給する給与から社会保険料を控除しない場合であっても、雇用保険料の控除は行うことになります。
社会保険料と雇用保険料では控除の考え方が異なることを覚えておきましょう。