労働時間の適正把握に関する新ガイドラインが策定されました

昨年12月26日に、厚生労働省の長時間労働削減推進本部が、今後の過労死等防止対策について、違法な長時間労働に対する監督指導強化の方針を示しました。

これを受け、厚生労働省は、1月20日、これまでの「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を拡充する形で「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定しました。

新ガイドラインのリーフレットはこちら

今後の労働時間管理に関する行政指導は、新ガイドラインを基準に行われることになります。 新ガイドラインでは、どのような拡充・変更が行われたのでしょうか。

新ガイドラインでは「労働時間の考え方」が明記

新ガイドラインでは、従来の基準には記載されていなかった「労働時間の考え方」が明記されました。

新ガイドラインでは、「労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされており、労働時間に当たる時間として次の3つの例が記載されています。

  • 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
  • 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
  • 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

これらの時間が労働時間に当たることはこれまでも通達などによって示されており、新しい考え方が改めて示されたわけではありません。

今回、周知徹底を図るために新ガイドラインに明記することにしたものと考えられます。

これらの時間管理が曖昧だと、思わぬ金額の未払残業代の支払いを指導されることにもなりかねませんので注意してください。

労働時間の客観的な記録方法に「パソコンの使用時間の記録」が追加

従来の基準から、使用者による始業・終業時刻の確認・記録は、原則として客観的な記録を基礎として行うこととされています。

客観的な記録の方法としては、従来、タイムカード、ICカードなどがその具体例として挙げられていましたが、新ガイドラインでは、これらに「パソコンの使用時間の記録」が追加されました。

国が、労働時間を確認するための方法として、パソコンの使用時間を重要視していることの表れと言えるでしょう。

自己申告制の場合に講じなければならない措置が追加

タイムカード等の客観的な記録に基づいた労働時間管理を行わず、自己申告制で始業・終業時刻を確認することは例外的な方法とされていて、自己申告制で時間管理を行う場合は、自己申告時間と実働時間との間にかい離が生じないよう、一定の措置を講じることが求められています。

新ガイドラインでは、自己申告制の際に会社が講じなければならない措置が大幅に追加されました。

  • 労働時間管理者に、自己申告制の適正な運用を含めて、ガイドラインに従って講ずべき措置を十分説明すること
  • 自己申告時間と入退場記録やパソコンの使用時間の記録との間に著しいかい離がないか実態調査を行い、所要の補正をすること
  • 自己申告時間を超えて事業場内にいる労働者にその理由などを報告させる場合には、その報告が適正に行われているか確認をすること
  • 36協定の延長可能時間を超えて働いているにも関わらず、記録上これを守っているようにすることが慣習的に行われていないかを確認すること

自己申告時間と実働時間とのかい離が生じた場合、その責任が会社にあることがこれまで以上に強調され、明確にされた印象です。 ガイドラインではありますが、民事上の未払賃金請求にも影響を与えるものと思われ、会社にとっては、自己申告制による時間管理を行うことのリスクが高まったと言えます。

労働時間把握は労基署の重要視ポイントの一つ

労働時間管理は、労働基準監督署が重要視するポイントの一つでもあり、今後、労働時間管理に対する指導は一層厳しくなるものと予想されます。

新ガイドラインに則った労働時間管理を心掛けましょう。

しのはら労働コンサルタントでは、労働基準監督官として多くの監督実施経験がある社会保険労務士が、長時間労働や残業代などの労務管理に関するアドバイスを行っています。

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