平成29年9月分(平成29年10月31日納付分)の厚生年金保険料から、保険料率が18.3%(労使それぞれの負担は9.15%)に引き上げられます。
厚生年金保険料率の引き上げは毎年行われていますが、今年は厚生年金保険において一つの区切りとなる引き上げとなります。
厚生年金保険料の段階的な引き上げが終了し今後は18.3%で固定
厚生年金保険料率は、平成16年に行われた公的年金制度改正で決定したスケジュールに従って段階的な引き上げが毎年行われていました。
同スケジュールに基づく引き上げは今回で最終となり、新たな制度改正が行われない限り、今後の厚生年金保険料率は18.3%で固定されます。
また、これまでは「一般の被保険者」と「坑内員・船員」で厚生年金保険料率が異なっていましたが、今年の引き上げによって18.3%に統一されました。
平成16年改正が行われた当時の厚生年金保険料率は、「一般の被保険者」が13.580%、「坑内員・船員」が14.960%でしたが、最終的にその差がなくなるように、一般の被保険者は毎年0.354%ずつ、坑内員・船員は毎年0.248%ずつの引き上げが行われてきたためです。
全国健康保険協会のホームページに掲載されている「健康保険・厚生年金保険料額表」では、平成29年8月分までの保険料額表は「一般の被保険者」と「坑内員・船員」で分けて厚生年金保険料額が記載されていましたが、平成29年9月分以降の保険料額表では「一般、坑内員・船員」に一本化して厚生年金保険料額が記載されています。
【参考】 平成29年8月分(9月納付分)までの保険料額表(東京都) 平成29年9月分(10月納付分)以降の保険料額表(東京都)
月例給与では今後端数は発生せず。賞与では労使折半額の計算で端数が生じる可能性あり。
今回の引き上げで、厚生年金保険料率は18.3%と小数点以下第1位までしかないシンプルな料率となりました。(引き上げ前の一般の被保険者の保険料率は18.182%。)
毎月の厚生年金保険料は、被保険者(従業員)の給与月額から決定される「標準報酬月額」に保険料率を乗じて算出されますが、標準報酬月額の最小単位は2,000円のため、月例給与に関しては、厚生年金保険料の全額や本人負担額を計算する際に1円未満の端数が生じることがなくなりました。
一方、賞与に対して課せられる厚生年金保険料は、「賞与額から1000円未満を切捨てた金額」に保険料率を乗じて算出されます。
そのため、賞与においても保険料全額の計算では端数を生じることがなくなりましたが、労使折半額の計算においては、賞与額の千の位が奇数(1,000円や5,000円など)となる場合に今後も1円未満の端数が生じます。
ただ、この場合の端数は必ず50銭となるため、「被保険者負担分を50銭以下切捨て51銭以上切上げ」の原則に基づいて処理をするのであれば、必ず会社側が端数分の1円を負担することになります。
【厚生年金保険料(全額)】
厚生年金保険料額の計算がこれまでよりも少しだけシンプルになったと言えるかもしれません。
本人負担分の控除は「翌月取り」「当月取り」のどちらで行っているかを要確認
新しい厚生年金保険料率(18.3%)は平成29年9月分の厚生年金保険料から適用されます。
会社は、毎月月末に「前月分の社会保険料」を納付しているため、平成29年10月31日に納付する社会保険料からが新しい厚生年金保険料率で計算された金額となります。
また、本人負担分は、「前月分の社会保険料」を毎月の給与から控除することとなっています。
「平成29年9月分の厚生年金保険料」は「平成29年10月に支払われる賃金」から控除されるため、本人負担分は、10月に支払われる給与の控除からが新しい厚生年金保険料率による計算となります。(翌月取り)
ただ、実際には、毎月の給与から「当月分の社会保険料」を控除していることになっている会社も少なくありません。
この場合は、「平成29年9月に支払われる賃金」から「平成29年9月分の厚生年金保険料」の本人負担分を控除していることになるため、9月に支払われる給与から新しい厚生年金保険料率による本人負担額の計算が必要となります。(当月取り)
新しく給与担当者となった方などは、ご自身の会社で「翌月取り」と「当月取り」のどちらで本人負担分の控除が行われているかを確認しておきましょう。
(関連記事:社員が退職するときの社会保険料本人負担額の控除方法)