休業中の収入補てんとして給付される「傷病手当金」と「休業(補償)給付」
健康保険の「傷病手当金」と労災保険の「休業(補償)給付」は、どちらも病気やケガをしてその療養のため休業している期間中の給与(収入)の補てんや補償として支払われる保険給付です。
しかし、この2つの保険給付は、1日当たりの支給額、支給期間、一部勤務した日の取り扱いなど、様々な点でその取り扱いが大きく異なります。
今回から4回に分けて、この2つの保険給付の相違点について解説したいと思います。(シリーズ関連記事はこちら)
第1回目は「待期期間の違い」についてです。
なお、労災保険では業務上の災害による給付を「休業補償給付」、通勤中の災害による給付を「休業給付」といい、これらをあわせて「休業(補償)給付」といいます。
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待期期間が完了するまでは保険給付はされない
傷病手当金と休業(補償)給付のどちらとも、休業期間が始まってからの数日間は保険給付が行われません。
休業しているけれども保険給付が行われないこの期間のことを「待期期間」といいます。
「待機期間」ではありませんので気をつけましょう。 待期期間は休業している日単位でカウントされます。
待期期間が一定日数に達すれば以降の休業日には保険給付が行われますが、これを「待期期間の完了」または「待期期間の完成」といいます。
傷病手当金は「連続3日」の待期期間が必要
傷病手当金では、待期期間の完了までに「連続3日」の待期期間が必要になります。
例えば、ある社員が7/19にケガをして次のように休業したとします。
この場合、7/24が連続3日の待期期間(7/22~7/24)が完了した日になりますので、傷病手当金の支払いはその翌日の7/25から行われることになります。
なお、待期期間は一度完了すればよく、待期期間が完了した後は、勤務日と休業日が交互にあったとしても休業した日ごとに傷病手当金が支払われます。
休業(補償)給付は「通算3日」で待期期間が完了する
一方、休業(補償)給付は、「通算3日」の休業日があれば待期期間が完了します。
通算ですので、休業日が連続している必要はありません。 先程の例でいえば、7/19、7/20、7/22の3日間で通算3日の待期期間が完了します。
したがって、その翌日の7/23から休業(補償)給付の支給が受けることが出来ることになり、傷病手当金よりも早く給付が受けられます。
待期期間は会社の休日や年休取得日でもカウントできる
健康保険と労災保険のいずれの場合であっても、待期期間は、実際に勤務をしていない日であればカウントすることができ、その日が所定労働日であったかどうかは問いません。
そのため、土日祝日などで会社が休みの日だったとしても、その日を待期期間としてカウントすることができます。
また、年次有給休暇を取得した場合、その日の給料は支払われることにはなりますが、実際の勤務は行っていませんのでやはり待期期間に含めることが出来ます。
したがって、例えば、土日休みの会社の社員が、木曜日にケガをして金曜日に年次有給休暇を取得して休んだ場合、金曜日、土曜日、日曜日の3日間で待期期間が完成し、月曜日以降の休業日は保険給付が行われます。