就活生に福利厚生の充実度をアピールする材料として、個性的な社員寮を用意する会社が増えてきているそうです。

(参考記事:社員寮増加 就活生に福利厚生の充実度をアピールする材料に(NEWSポストセブン)

社宅や社員寮はほとんどの場合、その地域の家賃相場よりも低い価格で貸与されるため、社員にとっては住宅費負担の減少につながり、給与額面以外の部分で大きな経済的利益を享受できるメリットがあります。

社会保険料の計算において住宅の貸与は「現物給与」にあたる

社員に社宅や社員寮を貸与している会社は、健康保険、介護保険、厚生年金などの社会保険料を計算する際に注意が必要です。

社会保険料の金額は、会社が社員に対して支払っている報酬額によって決まりますが、報酬額には、給与などの「通貨(現金)」で支払われているものだけでなく、食事の提供や住宅の貸与などの「現物支給」として支給されているものも含まれます。

そのため、会社が社員に社宅や社員寮を貸与している場合は、原則として、その価額を通貨に換算して報酬額に含める必要があります。

通貨への換算額は「都道府県」と「住宅面積」で決められる

社宅や社員寮の貸与を通貨に換算する際のポイントは、次の3つです。

(1)換算額は会社の費用負担にかかわらず住宅の面積によって決まる

住宅貸与の通貨への換算額は、会社が賃貸料や固定資産税などの費用をどれだけ負担しているかは関係なく、都道府県ごとに定められている価額(1.65㎡あたりの金額)に住宅面積を乗じて算出します。

(住宅貸与の通貨への換算額)=(住宅面積)÷ 1.65㎡ ×(都道府県ごとの価額)

 

都道府県ごとの価額は、日本年金機構のホームページで確認することが出来ます。

(参考:全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)

(2)住宅面積は、居住用の室のみを対象とし、居住用ではない室は含めなくてよい

上記(1)の計算式で用いられる住宅面積は、居住用の室のみが対象となり、居住用ではない室は対象となりません。

そのため、通貨換算額の計算に用いられる住宅面積は、賃貸物件の広告などに掲載されている住宅面積(専有面積)よりも小さくなることが一般的です。

居住用の室と居住用ではない室には、それぞれ次のようなものがあります。

  • 居住用の室・・・居間、茶の間、寝室、客間、書斎、応接間、仏間、食事室など
  • 居住用ではない室・・・玄関、台所、トイレ、浴室、廊下など

(3)社員から住宅費用を徴収している場合は、換算額から徴収額を差し引いた額が報酬額となる

社員から社宅費や寮費などの住宅費用を徴収している場合は、上記(1)によって算出した換算額と社員からの徴収額の差額報酬額となります。

そのため、会社が、社員から換算額と同額以上の住宅費用を徴収している場合は、住宅貸与による報酬の額はゼロとなります。

住宅の貸与によって社会保険料の負担が少なくなる場合とは

上記の通貨換算のルールにより、会社が社宅や社員寮を用意した場合、住宅手当を支給するよりも労使双方の社会保険料が少なくなることがあります。

例えば、次の2つのケースを比較してみます。なお、借りている部屋の居住用の室の面積は30㎡、都道府県ごとの価額は2,590円(平成29年4月現在の東京都の価額)とします。

【ケース1】家賃10万円の部屋を自分で借りている社員に、5万円の住宅手当を支給する
【ケース2】家賃10万円の部屋を会社が借り上げて、社宅費5万円で社員に貸与する

 

ケース1とケース2のどちらの場合も、会社と社員がそれぞれ負担している住宅費用は5万円です。

しかし、社会保険料の計算においては、ケース1とケース2で大きな差が生じます。

ケース1は、社会保険料を計算する際には、住宅手当の5万円をそのまま報酬額に含める必要があります。

一方、ケース2は、住宅貸与の通貨換算額が4万7090円(=30㎡÷1.65㎡×2,590円)となりますが、換算額を上回る5万円を社員本人から徴収しているため、社会保険料の計算上、住宅貸与による報酬はゼロとなります。

つまり、会社と社員がそれぞれ負担している住宅費用はどちらのケースも同じであるにもかかわらず、社会保険料を計算する際の報酬額はケース2の方が5万円少なくなり、その結果、会社と社員それぞれの毎月の社会保険料負担額は、約7,500円少なくなります。

住宅貸与によって社会保険料の負担削減を行う際の留意点

社宅や社員寮を上手く活用すれば、社員の福利厚生を充実させると同時に社会保険料負担の軽減にもつながります。

ただし、住宅借り上げに要する諸費用や手間、住宅使用に伴うリスクなどを会社が負担しなければならない点には注意が必要です。

また、社会保険料負担額が少なくなれば、年金額やケガや病気で休業した際の給付額も少なくなるため、万が一の際には従業員が十分な保障が受けられなくなる可能性があることも考慮しておきましょう。