労働安全衛生法施行規則の改正で労働時間把握が義務化へ!

厚生労働省は2017年8月6日、労働安全衛生法の施行規則(安衛則)を改正して、従業員の労働時間を適切に把握することを企業などの義務として明記する方針を固めました。

政府は、秋の臨時国会に時間外労働の上限規制などを盛り込んだ働き方改革関連法案を提出する予定となっており、関連法施行までに安衛則を改正するとしています。

現在はガイドラインに基づく指導が行われている

2017年8月現在、労働時間の把握に関して直接規制する法律はありません。

労働基準法第108条で作成が義務付けられている賃金台帳には、労働時間数や割増賃金(時間外労働・休日労働、深夜労働)の支払い時間数を記載する必要があるため、間接的には法律上も労働時間の把握を行う必要があると言えますが、把握や管理の方法について法律上の定めはありません。

そのため、現在は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づいて適正な労働時間管理を行うように企業に対して指導が行われています。

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」のリーフレットはこちら

同ガイドラインは、2016年12月26日に厚生労働省の長時間労働削減推進本部が違法な長時間労働に対する監督指導強化の方針を示したことを受け、それまでの「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を拡充する形で2017年1月20日に策定されました。 長時間労働に対する監督指導強化の方針が示されてからわずか1か月足らずで労働時間の適正把握に関する新ガイドラインが公開されたことは、国が長時間労働対策として労働時間把握を重要視していることの表れと言えるでしょう。

一方、新ガイドラインの策定という形で労働時間の適正把握の強化に乗り出してきたことから、当面労働時間の適正把握に関する法制化を行うつもりはないとも考えられましたが、思いのほか早く法制化に乗り出してきた印象です。

現在はガイドラインに過ぎないため、労働時間の適正把握措置が講じられていなくてもそれを理由に罰則が適用される(書類送検)ことはありませんが、法改正が行われれば、労働時間を適正に把握していないだけで罰則の対象となります。

労働時間の把握は健康障害防止の観点から必要

今回、労働基準法ではなく、労働安全衛生法の施行規則(安衛則)の改正で労働時間の適正把握の法制化が予定されています。

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を守り快適な作業環境を確保することを目的とした法律で、労働基準監督官が臨検監督で確認や指導を行う主要法令の一つです。

労働時間の適正把握は、賃金計算トラブルやサービス残業(未払い残業代)の予防・解決の面からも必要ですが、長時間労働による健康障害の防止の観点から求められるところが非常に大きいです。

例えば、いわゆる「管理監督者」は労働基準法第41条で労働時間、休日及び休憩に関する規定の適用対象外となっており、時間外手当や休日手当の支払いも必要ありません(深夜手当は必要)。 そのため、現在、多くの企業において管理監督者は労働時間の把握・管理が行われていませんが、管理監督者であっても、長時間労働による健康障害の防止の観点から労働時間を適正に把握することが必要です。

万が一、過労死や過労自殺が生じた場合には、管理監督者であることを理由に企業責任が免れることが出来るわけではなく、多額の損害賠償につながります。

「労働基準法で労働時間に関する規定の適用対象外であることと」と「長時間労働による健康障害防止の必要性」は全く関係がありません。

全ての労働者について、タイムカードなどの客観的な記録に基づく労働時間管理を行うようにしましょう。