「パパ・ママ育休プラス」は、両親がどちらとも育児休業を取得する場合に、原則として子が1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)までしか取得できない育児休業を1歳2か月に達する日まで取得できるようになる制度です。
パパ・ママ育休プラスはどのような場合に適用されるのでしょうか。
パパ・ママ育休プラスの要件や留意点などを具定的なケースとともに整理してみたいと思います。
パパ・ママ育休プラスが適用される要件
パパ・ママ育休プラスは、次の要件をすべて満たしている場合に適用されます。
- パパ・ママ育休プラスによって育児休業を取得しようとする労働者(以下「本人」)の配偶者が、子の1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)以前において育児休業をしていること
- 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業の初日以降であること
パパ・ママ育休プラスでは、配偶者がすでに育児休業を取得している場合に、後から育児休業を取得した者の取得期間が1歳2か月まで延長されます。
両親の育児休業期間は連続して取得されている必要はなく、また、重複していても大丈夫です。
両親ともに取得期間が延長される場合も
パパ・ママ育休プラスでは、後から育児休業を取得した者の取得期間が延長されるため、原則として両親がともに取得期間が延長されることはありません。
ただし、父親が「パパ休暇」(育児休業の再度取得の特例)を取得した場合には、両親ともに取得期間の延長を受けることが出来る場合があります。
パパ休暇は、父親が子の出生後8週間以内の期間内(母親の産後休業期間内)に取得する育児休業です。
育児休業を取得できる回数は、特別の事情がない限り1人の子につき1回ですが、パパ休暇を取得した父親は、特別な事情がなくても再度育児休業を取得することができます。
そのため、父親がパパ休暇を取得した後に母親が育児休業を取得することで母親がパパ・ママ育休プラスの対象となり、その後、父親が2回目の育児休業を取得すれば、母親がすでに育児休業を開始しているため、父親もパパ・ママ育休プラスの対象となります。
育児休業を取得できる最大日数は変わらない
パパ・ママ育休プラスは、「育児休業を取得できる期間」を延長する制度であり、「育児休業を取得できる日数」を延長する制度ではないことに留意してください。
通常の育児休業は、最長で出生日から1歳の誕生日の前日まで取得でき、これを日数に直すと365日(うるう年は366日)です。
パパ・ママ育休プラスは、この日数を1歳2か月までの間で取得できるようになるものであり、取得できる日数そのものが増加するわけではありません。
なお、母親の場合は、通常の育児休業が最長で産後休業(8週間)の翌日から1歳の誕生日の前日までとなるため、365日(366日)から出生日以後の産後休業期間の日数を差し引いた日数がパパ・ママ育休プラスで取得できる最大日数となります。
パパ・ママ育休プラスの適用の具体例
ケース① 両親が交代で育児休業を取得することで一方が働きながら最大1歳2か月まで育児休業を取得することが可能
母親が産後休業期間の終了翌日から1歳到達日まで育児休業を取得し、その翌日(1歳の誕生日)から1歳2か月到達日まで父親が育児休業を取得することで、両親のいずれかが働きながら二人合わせて最大1年2か月の育児休業を取得することが出来ます。
1歳到達日より前に母親の育児休業を終了して1歳到達日より前から父親が育児休業を取得することや、父親が先に育児休業を取得して母親が1歳2か月まで育児休業を取得することも可能です。
ケース② 母親と父親の育児休業期間は連続している必要はない
両親の育児休業期間は連続している必要はなく、後から育児休業を取得する方(図では父親)がパパ・ママ育休プラスによって育児休業の期間が延長されます。
ケース③ 母親と父親の育児休業期間が重複していても大丈夫
母親と父親の育児休業期間が重複していても、後から育児休業を開始した方(図では父親)がパパ・ママ育休プラスによって育児休業の期間が延長されます。
ケース④ 1歳誕生日より後に育児休業を開始することはできない
育児休業を1歳の誕生日以前から開始していない場合には、パパ・ママ育休プラスの適用はなく、育児休業を取得することはできません。
パパ・ママ育休プラスの適用を受けるためには、少なくとも1歳の誕生日から育児休業を開始する必要があります。
ケース⑤ 先に育児休業を開始した方はパパ・ママ育休プラスによる期間延長はされない
パパ・ママ育休プラスは、後から育児休業を開始した者(図では父親)の育児休業期間を延長するものであるため、先に育児休業を開始した者(図では母親)は育児休業期間の延長はされません。
ケース⑥ パパ休暇を取得している場合は両親ともにパパ・ママ育休プラスの適用を受けられる
「ケース⑤」の例外です。
母親の産後休業期間中に父親がパパ休暇を取得した場合、その後に母親が開始した育児休業はパパ・ママ育休プラスによる育児休業期間の延長が受けられます。
父親は特段の理由なく再度育児休業を取得できますが、母親が育児休業を開始しているため、父親が再度取得する育児休業はパパ・ママ育休プラスによる育児休業期間の延長が受けられることになり、結果として両親ともにパパ・ママ育休プラスによって育児休業期間が延長されることになります。